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正しいリスク感覚を持つことの重要性

コンサルタントという仕事柄、ベンチャー企業とも、オールド企業とも一緒に仕事をします。その過程で不思議に感じるシーンがあります。それは経営面での“リスク管理(リスク回避)意識の差”です。人口減少、少子高齢化の影響が2014年ぐらいから、はっきりと出るようになったため、「変わらなきゃ」「変えなきゃならん」というムードを全業種、日本中の企業が持つようにはなりました。しかし、リスクの捉え方には大きな差があると強く感じるのです。どちらのタイプの企業も「変化することが大切。これからの社会では変化への挑戦なしに成長はない」とハッキリと謳うのですが、実際には微妙にニュアンスが違うのです。

そもそもベンチャー企業は社会の変化を上手に捉えて成長してきた企業です。特に著しい成長を感じさせてくれる企業は市場そのものを創造し、ブルーオーシャン状態の中で一歩抜きんでた企業です。ですから、「変化=チャンス」ととらえて自然に挑戦していける企業です。特にIT関連企業などは既存事業者と既存事業者とをマッチングさせる事業などが得意であり、一気に市場を奪う構想を打ち立てて攻めてきます。しかしよく見てみますと話は大きいように感じるのですが、小さく産み出して大きく育てる型の事業が多く、投資に関してはあまりリスクはしょっていないことが多いのです。事業の多角化に関しても、自分たちが絶対に勝てる分野に挑戦するということを中心に組み立てていきます。

ところが重厚長大企業、小売企業などのオールド企業は工場の設備投資、出店・店舗活性化に関して、「変わらなきゃ」という言葉や意識とは裏腹に、根本的な問題を解決せずに、これまでと同じ土俵、同じ事業ドメインで新しいブランドや商品で市場に挑戦している“つもり”になっていることが多いのです。その挑戦はひどい場合「賭け」と言ってもよい場合もあり、今のままじゃだめだから、大勝負して投資して工場設置、店舗出店していこうとなっているのとあまり変わらない場合もあるわけです。ITの場合はWEBサイトを開設するといっても、数千万~1億円というような単位の投資も初期段階では必要ない場合が多いのですが、店舗や工場をひとつ作るだけでも数億円の投資が必要になることもざらです。

さらに維持・管理費・人件費もかなりかかることになります。アパレル企業などで特に多いのですが、ブランドが変わってもビジネスモデル=利益構造や商売の仕組みがぜんぜん変わっていない、つまり少しターゲットを変えたり、見栄えを変えての挑戦に終わることも多いのです。しかしそういう“挑戦”をする企業に限ってオンラインショッピングのページも旧態以前であったり、そもそもECに挑戦していなかったりというような状況が見受けられます。同じ投資なら市場がこれからもぐんぐんと伸びていくことが明らかなECで挑戦することも真剣に検討すべきなのに、いつまでたっても昔とった杵柄型のビジネスで「苦しい、苦しい」と言っていることも多いのです。最近ではさすがにもたず、大量閉店、ブランド休止というようなことも多く起こっています。

陳腐化している市場のプレイヤーが昔のままのやり方で多大なリスクをとり、大きな資金をつぎ込んで失敗を繰り返しがちなのに対し、冷静に市場を見つめ、勝てる勝負を仕掛けてくるベンチャー企業は“リスクのとり方”の発想自体が大きく違っていると思います。これは挑戦(挑戦する、挑戦しない)のリスクだけではなく、失敗したときのリスクの捉え方がまったくことなることを意味します。これは急成長するベンチャーからみると、なぜそんなに勝ち目があるかないか不透明分野にオールド企業が挑戦するのだろう。そしてなぜもっと勝ち目がある分野があるのに、その可能性追求をしないまま目の前の機会を見逃すのだろうという話になるのです。

いつの世もリスクを取るから果実としてのリターンが発生するわけですが、そもそも論として「視野の広さ」「情報収集力」「柔軟で自由な発想」が大概の勝負の分かれ目となっていることには注意をはらいたいものです。経営者は視野を広くもち適正な事業展開に取り組んでもらいたいと思います。現状のビジネスの打開、新規事業を開始する際には、大勝負ではなく、冷静に事業性評価、事業の収益シミュレーションを実施することもリスク回避の視点として重要なことです。また中国などに進出したものの撤退タイミングを逃しているとの相談も急激に増えてきています。問題解決できずにただ現状維持を続けることのリスクにも目を向ける必要があります。コンサルタントの客観的な視点も上手に利用していただければと思います。

岡 聡
株式会社船井総合研究所 執行役員 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/流通業(メーカー・卸・小売)向け
入社以来、アパレルメーカーでの企画・製造・小売の総合的な知識に船井流マーケティングをドッキングさせ、ドラッグストア、ホームセンター、商業施設・商店街、食品スーパーなどの小売業の活性化、メーカー戦略、ブランド開発、商品開発、チャネル開発、新業態開発、営業部隊活性化、本社戦略・営業システム開発、マーケティング教育などをトータルに企画・コーディネートし、企業の経営企画をサポートしています。(経済産業大臣登録 中小企業診断士。日本商工会議所・全国商工会連合会 1級販売士。)