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こだわりのSPA企業[マーケティング戦略・営業戦略]

皆様は、「メーカーズシャツ鎌倉」という企業をご存知ですか?

都内のターミナル立地を中心に、20坪ぐらいのビジネスシャツ専門業態を、13店舗展開しているSPA(アパレル製造小売業)です。

年商は15億円で、1993年の創業以来業績を伸ばし続けており、当社の調査によると、シャツ専門業態においては、現在最もユーザー認知度が高い企業です。

「上質なシャツをリーズナブルな価格で提供する」をコンセプトに、4,900円のワンプライスで、全ての商品に以下のプロダクトポリシーを掲げています。

1.素材は綿100%、80番手双糸以上のもの
2.縫製は丈夫な美しいシングルニードル(巻き伏せ本縫い)
3.ボタンは天然の高瀬貝を磨き上げた貝ボタン

多くのビジネスマンにとって、ビジネスシャツは戦闘服であり、消耗品です。
(女性はトップスとして、華麗に装うアイテムの一つとなっておりますが。。)

クールビズで、男性ビジネスマンのファッション意識が変化してきているとは言え、まだまだビジネスシャツへのこだわり・嗜好性は、あまり高いものではありません。

皆様は上記のプロダクトポリシー、どの様に感じますか?

私自身、ビジネスシャツには比較的こだわりがある方ではないかと感じているのですが、当初、私はこのポリシーに正直驚きました。

ここまでのこだわりがあり、4,900円のワンプライスで、全て日本製!!
これには、大きな感動すら覚えました。

しかし、これ以上の驚きが、実は業界関係者の口から出てきました。
「メーカーズシャツ鎌倉のプロダクトポリシーは、シャツ業界の中では、誰もが当たり前にできるレベルなんです。」

この言葉が何を意味するのか、皆様はお解りでしょう。
そうです。この製品レベルは、私達消費者にとって、遠い存在ではなかったのです。ご存知でしたか?(私は知りませんでした。。)

それではマーケティング視点で、この問題を考えてみましょう。
現在のシャツマーケットは、プロダクトライフサイクルで考えると、成熟期であると言えます。
マーケットの成長性は頭打ち傾向であり、また、ユニクロに代表される新規参入が多く、市場の競争は激化しつつあります。
各シャツメーカーは、コスト削減の為、積極的に海外生産基盤を確立、また、サプライチェーンを短くする為に、自社店舗での小売に積極進出しております。

元々、日本のシャツメーカーの歴史は古く、大手は70年から100年の歴史があります。企画・生産のノウハウが蓄積されており、ものづくりには非常に競争力があるのです。

そういった業界環境の中、創業間もないこのメーカーズシャツ鎌倉が、なぜユーザーからの支持を得ることができたのでしょうか?
成功要因となる差別化要素は何だったのでしょうか?

様々な要因が考えられますが、私が考える成功要因・差別化要素とは、「作り方」ではなく、「売り方」にあると考えます。
「作り手」が当たり前に考えている事が、ユーザー(「買い手」)にとっては、当たり前ではなかった事を、彼らは知っていたのです。

様々なインフラが整備されているシャツメーカーが、ビジネスモデルの変革へと注視する中で、彼らは自分達のもてるリソースをベースに、「売り方」を工夫しました。

それが彼らのプロダクトポリシーになり、店舗・HPなどでわかりやすく訴求されると、新たな価値として市場で認知され、その価値に共感する層を呼び込み、業界における新たなポジションを勝ち取ったのです。

「そんなの当たり前だ」とか「そんな事今更やっても」という言葉は、様々な事業の局面において、よく議論されることではないかと思います。

もし、皆様の会議室で、上記の様な会話が交わされていたら、答えは一つです。
「ユーザー(もしくは顧客企業)に聞いてみよう。」

現在の情報社会においては、様々なマーケティングリサーチ手法があります。
インターネットを活用したWEBリサーチや、顧客を無作為に抽出したグループインタビュー、調査会社を活用したデプスインタビューなどです。

顧客のニーズは何か、それを競合はできているか、自社でなくてはならない理由がそこにあるか。
客観的な視点で考え、検証し、また考える事で、ニーズの本質に迫る。
こういった基本的な事が、事業の意思決定には、非常に重要なのではないでしょうか。

メーカーズシャツ鎌倉、多忙を極める読者諸氏の皆様にとって、新たな刺激になるはずです。

メーカーズシャツ鎌倉
⇒ http://www.shirt.co.jp/ 

(西村 仁)
(この記事は2008年5月19日に初掲載されたものです。)