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間違った模倣

成長市場においては、業績を躍進させている企業が同業他社の「モデル」とされて、先行者に追いつけ追い越せというベクトルで、業界全体が前向きに取り組んでゆくことが多いです。しかし、これが成熟市場においては、かつての先行者が必ずしも「モデル企業」ではなくなり、何をモデルにしたらよいか分からない状況になりやすいと言えます。

ここでよく見受けるのが、「間違った模倣」が増えることです。ついつい大手企業が行うことを、これといった検証なく模倣して、結果的に間違いだったと後から気づくことが多々あります。流通業でよく見受けられる「間違い」の例としては、「店頭の在庫を減らして資金効率を高める」というものです。一見、これの何が間違いなのか?と思われるかもしれませんが、お客様の目に触れない流通在庫については圧縮されるほうがよいのですが、お店の店頭在庫の場合は、これを減らすと集客力が落ちて売上げが落ちます。

お店の売上げとは、店頭在庫×回転率の数式で理解できます。店頭在庫を減らすということは、回転率を高めないといけないわけですが、在庫を減らした以上に集客を得ようとすると、それだけの販促費を追加投入せねばなりません。そこまではできずに、結果として在庫を減らした分だけ売上げも下がるという悪循環に陥ることになります。スーパーマーケットでも、雑貨大型店でも、ホームセンターでも、大型店がリニューアルするたびに店頭在庫のボリュームが減り、SKU数が減少している事例をいくつか目にします。

それで売上が上がるなら何ら問題ないのですが、そういうお店が活性化して再生したという話は耳にしたことがありません。そういう方針を掲げる会社で経営幹部の方に「なぜそのような方針を?」とお伺いしますと、「業界上位の企業がそのような店をつくっているから」「大型店なので見通しを良くしたい」といった、あまり確信のない、なんとなくそうなんじゃないかというご回答を頂戴します。小売業は粗利一定とするなら、不動産費用との関係で営業利益率が決まります。

なので、同じ不動産費用であるならば、より多くの在庫を持、より売上高を上げるほうが営業利益率は高まります。しかしながら、売上げが下がる→基準在庫高を減らす→予算を下げる→さらに売上下がる というダウンスパイラルから脱却できていない状況になっています。売上が下がって在庫を減らすならば、売場面積を小さくして余剰売り場を別商品やテナントで活用することが必要になるわけです。また、それはそうと分かっていても社内の諸事情でできない企業もあります。

そういった状況に陥っているのを外からみて分からないために、大手企業や業界上位企業がやっているからと、間違って模倣してしまっている事例を多く見かけます。こういった、「間違った模倣」に縛られて、業績向上のチャンスを逃してはいないでしょうか?お客様から見て、いったいなにが正しい姿なのか、原点に立ち返って考え直してみることが大切ですね。

山本 匡(ヤマモト タダシ)
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/ショッピングセンター経営・ディベロッパー経営 船井総研における店舗開発・物件開発の第一人者。大型ショッピングセンター開発を中心とした、店舗・物件開発を多数手がける。ビジネスモデル構築を得意としており、開発業務を支援するのではなく、成功する事業構築を支援することを信条としている。 実務面では、マーケティング調査から立地選定、建築・内装計画、レイアウト、運営計画、コストコントロール等、SC開発の実務に精通。地元主導SCにおける多くの経験をもとに、タウンマネージャーとして、地方自治体や商工会・会議所、TMOにまちづくり事業への助言実績も多数。専門店の店舗開発・リニューアルも手掛けており、店舗だけではなく商品開発でも成功事例多数。