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コンサルティング脳の使い方(8)~ヒアリングのポイント~

今回はヒアリングのポイントについてお伝えする。当たり前だが、プロジェクト開始前には必ずクライアントに対してヒアリングを実施する。稀に、クライアントの言うことを鵜呑みにしたり、ヒアリングで得た情報をまとめた資料をそのままクライアントに提出するコンサルタントを見かけるが、これは論外。なぜならヒアリングで得られる情報はクライアントの事業構造や社風、経営課題などを大まかに捉えるための参考情報の一つにしか過ぎないからである。端的に言うと、ヒアリングで得られる情報の中には「間違った情報」や「不必要な情報」が混在しているということだ。この状態でヒアリング資料をまとめてクライアントに提示すれば、かえって混乱を招く。

では、どのようにしてヒアリングで得た情報の中から「間違った情報」や「不必要な情報」を排除するか?

方法はいくつかあるが、ここでは次の3つのポイントを押さえていただきたい。

【1】できるだけ定量的に事象を捉える。
【2】意見を事実として再定義する。
【3】原因と結果の関係に着目する。

【1】はヒアリングの回答者が感覚的に事象を捉えて発言している場合に適用する。例えば、「どの事業が儲かっていて、どの事業が儲かっていないか」、あるいは「どの業務は効率的で、どの業務が非効率か」といった話は、定量的に分析しきれていないことが多いので、内部データをもらってしっかりと検証をする必要がある。ヒアリング内容とデータ分析の結果が一致しないというのは、現場では良くある話である。

【2】はヒアリングの回答者により認識が異なる場合に適用する。例えば、Aさんに聞くと「うちの会社は営業活動が出来ていない」という回答だが、Bさんに聞くと「営業活動は出来ている」という回答だったりする。こういう状態だと、意見がバラついていて事実を掴めない。それぞれが個人的に感じている「意見」を述べているからだ。

このようなケースは、それぞれが何を根拠として(何を見て)意見を述べているのかを確認しなければならない。特定の部門、あるいは特定人を指して評価しているのか、営業フローの要素の一部を指しているのか、特定の販売ルートに対する営業活動を指しているの・・・。評価対象と、評価指標を再定義しなければ事実を掴めない。理想的な営業活動の状態を定義し、それと事実(現状)を比較すれば、「意見」を「事実」として再定義することができる。

【3】はヒアリングの回答内容が、クライアントにとって本当に問題視すべき事象かどうかを判断する場合に適用する。例えば、ヒアリングで「うちの会社は営業担当者ごとに営業手法がバラバラなんです」という回答があったとしよう。当社のようなコンサルティング会社の場合は個々のコンサルタントにより営業手法はバラバラの方が、かえって都合が良く、様々な顧客ニーズに柔軟に対応でき不況にも強い。では、「営業手法がバラバラな状態」がクライアントにとって問題と判断すべき事象か否かをどのように判断するか?これは単純で、「営業手法がバラバラな状態」が原因となって別の問題を引き起こしているかどうかを見れば良い。原因と結果の関係を整理すれば誰でも容易に判断できる。

これらのルールに従って、
・結局クライアントは何に一番困っているのか?
・その問題を発生させている根本的な問題は何か?
・どんな解決策(仮説)を提案すれば喜んでもらえるか?
といった視点で、ヒアリングで得た情報整理してデータ分析と合わせてアウトプットしなければ
ならない。

「コンサルティング営業」という言葉を良く耳にするが、実はしっかりとヒアリングができていない結果、まともな提案ができないケースが多い。これはコンサルティング会社だけでなく、モノやサービスを売る組織であれば皆同じである。

濱野 雄介
船井総合研究所 プロジェクトマネージャー