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ケンタッキーのハンバーガー展開にみる、新規顧客獲得のためのポイントとは?

【1】外食業界の熾烈な競合環境
長期的なトレンドとして、日本は少子高齢化が進行しており、それに連動して外食市場は2000年前後をピークに減少傾向にあります。そして市場規模の縮小・外食産業の成熟化に伴い、業界内での競争環境も激化している状況です。少ないパイの中で、各社が日夜、新たな顧客獲得のための競争を繰り広げています。

例えば、ファミリーレストランがアルコール販売を強化し、居酒屋業態からの顧客スイッチを図る回転寿司屋が女性を意識した高価格な業態を立ち上げる高価格帯レストランが、スタンド型の「立ち飲みバル」業態を立ち上げる等、各社とも「今までやってこなかった新たな取り組み」を行うことで、新規顧客の獲得を目指しています。

【2】チャレンジングな新提案・ケンタッキーのハンバーグ商品投入
新規顧客獲得のための新たな取り組みとして、最近ケンタッキーがニュースになりました。
ケンタッキー、“禁じ手バーガー”に潜む狙い」東洋経済オンライン 1月24日(土)

ケンタッキーは社名にもある「チキン(鶏肉)」が中核にあるファストフード業態です。そんなケンタッキーですが、2月5日に、初めて牛肉・豚肉を使ったハンバーガーを販売(数量限定・2月末までを販売期間と想定)することが記事となっています。

記事中には「チキン以外の商品をリリースすることで、他のファストフードと同質化してしまわないか?」というリスクは承知の上、それでも近年の新規顧客が獲得できていない状況を打破すべく、新商品展開の開発に踏み切ったことが記されています。

【3】チャレンジの甘い罠
ケンタッキーの取り組みが成功するのか、失敗に終わるのか。現時点でその予想をすることは困難です。しかし、最も重要な点は、新たな取り組みを「ただのチャレンジ」にしてしまうのではなく、「有意義なチャレンジ」にすることです。そして我々が定義する“有意義なチャレンジ”とは、「成功・失敗いずれの結果にせよ、その要因がある程度特定されており、施策の実行結果を客観的に評価できるチャレンジ」を表します。
 
なぜ、我々が上記視点を意識するのかというと、チャレンジをしたものの効果検証が十分になされておらず、施策が継続されていない、又は中途半端な形で終了してしまうケースに遭遇する場合が多いからです。例えば、新商品の投入施策について、展開エリア・導入店舗の条件・お客様へのお勧めルール等、様々な決め事をしないまま施策が行われ、

「部下:売上は特に変わりませんでした。」
「上司:売上は一緒でも、顧客属性は変わったのでは?来店頻度はどうなった?実行前と後でなにか影響は?」 「部下:そこまではデータをとっていないので、わかりません。。。」
(※小売業チェーンを例にとった場合のやり取りイメージ)

といったような具合に、結局施策自体の効果検証ができず、施策をやめるべきか、継続すべきか、拡大すべきか、適切な判断ができず、中途半端な展開状況で終わってしまうケースは、実は、非常に多いのです。新たな取り組みの検討・実施は、停滞した現状を打破する上で必要ですし、また、組織の中で魅力的に映りがちです。しかし、明確な目標や効果検証ポイントを設計していない新規施策の実施から、得られるものは限りなく少ないといえるでしょう。

極端な話をしてしまえば、目標や効果検証ポイントといった狙い無き新規施策は、実行しないほうがいいとも言えるかも知れません。それならば、既存施策をより徹底実施して効果検証に時間を欠け、現状把握をより精緻に行うことのほうが、得られるものが多い場合もあるのです。

【4】効果検証の設計イメージ例
では、どのような視点をもって、目標及び施策の効果検証視点は設計すべきでしょうか。今回は、マーケティングを行う上で代表的な分析視点である「認知⇒検討⇒購買⇒リピート」といった顧客の商品購入までのプロセスをつかった視点設計方法を解説します。

★ある飲食チェーンで、女性20代顧客比率の10%アップを狙った新メニューを展開する場合
【検証ポイント】

1:認知
● 施策実行により、ターゲット顧客からの店舗ブランド認知度は高まったのか?
● 施策実施前と一定期間実施後のアンケート調査から、ある程度の傾向把握が可能

2:検討
● 顧客は常に、競合サービスとの比較の中から利用するお店を選ぶ
● 施策実行前と後で、ターゲット顧客の「店舗検討リスト」に登場する割合は高まったのか?
● アンケート調査やインタビュー調査から、ある程度の傾向把握が可能

3:購買
● 施策の実行により、実際に店舗利用客及び客単価は高まったのか?
● 単純な売上のみならず、時間帯別・曜日別・関連購買実績別等のデータも踏まえて分析することで、施策がどのタイミング・カテゴリーの売上アップに貢献したかの把握が可能

4:リピート
● 施策の実施前と後で、リピート客はどの程度増えたのか?また、リピート理由に新商品の品質の高さをあげる割合はどの程度か?
● リピート顧客の定義をあらかじめ定め、施策実行前と後の来店実績データの分析から傾向把握が可能。
● また、リピーターに対するアンケート調査からもある程度の傾向把握が可能。

上記に掲載をした検証ポイントを事前に留意した上で新規施策を実行、効果検証をすることで、顧客の購買プロセス別の傾向把握から、ゴールである「購買」「リピーター」アップのための必要要件を抽出していくことが可能となります。

また、購買プロセス別に結果を検証することで、たとえ購買やリピート化に結びつかなかった失敗施策であったとしても、その要因を後から検証していくことが可能になります。検証ができれば、たとえ失敗施策であったとしても、得られた情報は今後の成功に向けた貴重な財産となることでしょう。

吉田 創
マネージングディレクター
船井総合研究所に入社以来、様々な業種・規模のクライアントに対し、経営戦略/中経営計画の策定、ビジネスモデルの再構築、新規事業開発をサポートし、これまでの累計担当社数は300を超える。 その経験を活かし、持続的成長に向けた課題を見える化する「ビジネスモデル診断」の開発、高収益なビジネスモデル作りを目的とした経営者研究会「企業価値向上益経営フォーラム」を主宰している。