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高く売る

今では、ショッピングモールでおしゃれな腕時計が1万円を下回る価格で販売されています。しかし、これだけ時計の価格が下がった現代においても、何十万円、何百万円というスイスの高級時計は全世界で売上を伸ばしているといいます。なぜスイスの高級時計メーカーは、時計の単価が下がっている中で、高単価な商品で売上を伸ばすことができているのでしょうか?私はそのポイントは以下の3点だと思います。

1.プロモーションに力を入れている
まず、スイスの時計メーカーは、プロモーションに多大な費用を費やしています。しかも、大衆をターゲットにしたテレビCMなどをおこなうのではなく、富裕層が使用するラウンジ、銀行、ビジネス紙など高級腕時計を欲しがるような層に向けた広告をおこなっています。そして、実際にプレジデント、ウェッジ、日経ビジネスなどに掲載されている広告を見ると、そこに掲載されている時計には価格は記載されていませんが、間違いなく何十万円とするだろうという高級感が伝わってきます。多くの人が、時計のブランドについてこういった広告から情報を得て、いつか成功してその時計を身につけたいという気持ちにさせられていると思います。

2.絶対に安売りをしないという姿勢を徹底している
スイスの高級腕時計を購入する際に、値引き交渉をする人はあまりいないと思います。高級時計なのでたとえ5%でも値引きをすれば金額は大きくなるのですが、なぜ値引き交渉をしないのでしょうか?誰もが、スイスの高級時計は値引き交渉に応じないことを知っているからだと思います。ではなぜ、スイスの高級時計は値引きに応じないのでしょうか?それは、スイスの時計メーカーが、価格競争をしないという姿勢を貫いているからです。

かつて、日本のメーカーが水晶振動子の働きを利用することで高い精度を実現したクォーツ時計を低価格で販売して世界の市場を席巻しました。その当時、日本メーカーにシェアを奪われ、苦境を陥ったスイスの時計産業を救ったのがスウォッチです。スウォッチは、クォーツ時計をあえて日本のクォーツ時計よりも高い価格で販売しました。ただし、ただ価格を高く設定しただけではありません。

まず、ファッション界と同様に春夏と秋冬コレクションの年2回新作を発表し、一つのモデルは1シーズンのみの販売としました。この季節感のあるファッション性を重視した取り組みはまさに流行を追う顧客の心を掴むことに成功し、一躍スウォッチの名前を世界中にとどろかせました。その結果、スウォッチはあっという間に日本メーカーからシェアを奪い返し、スイスの時計産業は再び世界No.1のポジションを確固たるものとしました。このスウォッチの姿勢からも、スイスの時計メーカーは例え安い製品に市場のシェアを奪われたとしても、価格競争をするのではなく、価格以外のところで競争しようという姿勢を強く感じることができます。

3.スイスでのものづくりにこだわっている
今中国で時計を生産すれば、2ドルもあれば十分生産できると言われています。しかしながらスイスの高級時計メーカーは、世界で最も物価が高いスイスでの製造にこだわりつづけています。そして、現在は、「部品価格の50%以上」がスイスで作られていなければスイス製とうたうことはできませんが、スイスの時計メーカーは、さらにこの定義を「部品価格の60%以上」に上げようとしています。このことからも、スイスの高級時計が原価よりも、他の時計と差別化されたポジションでブランドを確立することを重視していることが分かります。

リーマンショック後、多くの日本メーカーは、コスト削減に注力しました。コスト削減のためにおこなったことが、販促費の削減と、生産の海外移転による人件費の削減です。そのようにコストを削減してきた結果、今、日本の製品は台湾や韓国などの技術力が高まってきたメーカーとの価格競争にさらされており、さらにコスト削減に注力しなければならない状況に陥っているといえます。

スイスの高級時計メーカーは、リーマンショック後も積極的にプロモーションを継続しており、またスイス国内での生産を維持して差別化を図ることで、一切価格競争に巻き込まれることなく、売上を伸ばしています。日本メーカーも、「発想の転換」を行い、スイスの高級時計メーカーのように、「いかにして価格競争に巻き込まれずに売上を伸ばすか?」ということをかんがえていかなければならないと思います。