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売上が伸び悩む今、現場で何が起こっているのか? 多くの企業が陥る間違いだらけの“営業力強化”とは

■ 営業は「結果」、しかし「結果」からは何も見えてこない

「うちの会社は、どうも営業力が弱いんですよ。だから営業力強化は喫緊の課題です」

多くの市場が、ライフサイクルでいうところの“成熟期”あるいは“衰退期”にさしかかっている昨今、
この“営業力”を課題として捉える企業が増えてきたように思います。
ところが一方で、突っ込んだ(「営業力が弱い」とはどういうことだろうと)質問を重ねていくうちに、
なかなか実態を把握しきれていないケースがほとんどだということに直面します。

要するに、いわゆる“見える化”ができていないのです。
しかしながら、これはある意味、致し方ない部分があります。
長い間(というか現在も)、営業という部門は、
基本的に売上目標を達成することだけ求められており、
結果さえ出せば細かいところまで気にする必要がない、というのが実態だったからです。

つまり、「営業力が弱い」という話の前提は、「(思ったほど)売れていない」という“結果”に対するイメージでしかなく、
だからこそ追求してみたところで、明確な原因に辿り着きません。

これは以前、サッカー日本代表の課題のなかで取り上げた「決定力が弱い」という話と同じ構造になっているような気がします。

■ “決定力不足”の日本代表はなぜ予選突破できたか。真の戦略的課題には明確な優先順位がある

昨年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会直前、調子の出ない日本代表に対して、
マスコミの多くは「決定力不足が課題」だと報じていたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。

この報道を見ながら、以前、「サッカー日本代表に学ぶ「強い組織づくり」の極意」という記事の中で、
主に2つの論点を取り上げました。

ひとつは、“市場”の視点で、アジア予選と本大会では日本のポジショニングも大きく異なる(アジアにおける日本は強豪国だが世界における日本は弱小国)のは明らかであり、
アジア予選でも度々取り上げられていた「守備的な対戦相手を崩し切れない=決定力不足」という課題をそのまま本大会に持ち込むのは危険なのではないかということ。

もうひとつは“時間軸”の視点で、「決定力を向上しなければならない」と挙げるのはいいのですが、
果たしてあの短期間(1~2ヵ月)で解決するのが可能なのかという疑問です。
つまり、中期的な課題として取り組むべきこととしては間違いないと思うのですが、
本大会までの短期間に改善できる可能性が高いのは「対戦相手に得点を与えないこと」ではないか、という話です。

当時、ワールドカップでの目標を“ベスト4”と掲げていた岡田元監督は、恐らくこういった視点を持ち、
大胆なスターティングメンバーの入れ替え、
ポジションの変更を断行して、「予選ラウンドすら突破できない」という前評判を見事に覆しました。

これらは、戦略的視点の考察として学ぶべき点が非常に多いと思います。
ところが一方で、「営業力が弱い」という話と同様に、「決定力が弱い」という事実に対して対策を講じていこうとするならば、
「どう認識するか」という点を徹底的に追求していかなければなりません。

■ 「営業が弱い」というイメージだけではダメ! ディテールの数値化で把握すべき事実を洗い出す

「決定力が弱い」というだけでは、単に得点できないという事実をさして、
「この辺が課題ではないか」というイメージを挙げているに過ぎません。
「営業力が弱い」から「営業力を上げる」といっても具体的に何をすべきかまでは見えてこないのと同じで、
もう少し詳しくみていく必要があるのです。

例えば、決定的な瞬間はいくつか作れるのにもかかわらず、
最後のシュートの精度が低くて得点できていないということなのか、
それともある程度のボールキープは出来ているにもかかわらず、
局面を打開するような動きができていないということなのか。
この2点だけとっても、「どう認識するか」に関しては大きな違いがあります。

さらに言うと、「いくつか」作れていると思っている決定的な瞬間に関しても、
1点得点するのに必要な回数作れているのかどうか、という視点でみると「どう認識するか」は変わってきますし、
「ある程度」のボールキープといったときの合格ラインとなる数字まで考慮すると、
こちらも変わっていく可能性の高いものだと思います。

そして理解しなければならないのは、その「どう認識するか」によって、打つ手が大きく異なるということなのです。

メッシやロナウドのような優れたストライカーを育てる、
組織力を高めて速いパス回しで難しい局面を打開する、
フォーメーションシステムの工夫でボールを支配できる時間を増やす。
どれもが勝利には必要な要素ですが、“今”どこに注力すべきで、“将来”に向けて何を準備すべきなのか、
を明らかにしなければ、強いチームづくりは前に進まないでしょう。

そう考えると、「営業力が弱い」というイメージも、その状況を詳細に分解して、数値化を図りながら“見える化”することで、
ようやく「どう認識するか」というスタートラインに立てるわけで、そこまで到達しなければ改善策は立てられないのです。

■ 多くの会社は「提案力」以前の問題。本当にターゲット顧客の現状を把握できているか

あるとき、システム販売会社A社の営業部長からこんな依頼がありました。

営業部長: 「うちの営業マンは、主に年商100億円~1000億円位の規模の企業に対してシステムを販売していますが、どうも営業力が弱いと思っています。
特に提案営業が実践できていないみたいで価格競争に巻き込まれるケースが多いです。
何とか提案力を高めるようなコンサルティングをお願いしたいのですが。」

川原: 「わかりました。弊社には、ターゲット顧客の状況(どんな問題に困っているのか)を把握できていれば、その情報を整理した上で“真の問題点”を抽出して解決策を提案する、という流れを体系的に進めていく手法があります。
ただし、A社におけるターゲット顧客の現状を把握できていないようだと、全く前に進んでいかないリスクがあるのですが、その辺は大丈夫ですか?」

営業部長: 「うちは、脈がありそうだと思ったら、頻繁に訪問するやり方でフォローさせていますから、問題ないと思いますよ。是非よろしくお願いします。」

このようなやりとりの後、実際にコンサルティングを開始したのですが、
ほとんどの営業マンがターゲット顧客の現状を抽出する段階でつまずいてしまいました。
やはり、「ターゲット顧客がどんな問題を抱えているのか」といった情報は全く聞けてないのが実情だったのです。

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A社営業部長は、「何度も訪問していれば、当然様々な情報が入っているだろうから、そういった情報を軸に提案を作るスキルさえ磨けば“提案営業”のカタチが作れるはず」と思っていたようですが、その情報は収集できていなかったわけです。

これは冷静に考えてみれば当たり前のことで、単にシステム会社の営業マンだと思われている限り、
システムに関する話はしてもらえるかも知れませんが、それ以外の問題点など話してもらえるはずがありません。

つまり、A社のビジネス特性を前提とした場合に提案営業を実践するためには、
営業マンが問題点を話してもらえるような「信頼関係を構築する」ことが必要不可欠になります。

営業部長自身は、「信頼関係を構築する」のは営業マンにとって基本中の基本であり、
あえて教えるものでもないもの(営業であればそもそも備わっているもの)、
という考えを持っていたようで、随分ショックを受けていましたが、決してそうではありません。

■ 商品・サービスだけで惹きつけられない今、自社独自の“型”をつくろう

誰もが感じているように、商品・サービスの優位性で顧客を引きつけることが難しくなってきたこの時代では、
営業の役割として「信頼関係を構築する」重要性がどんどん高まっています。

以前であれば、「面談」→「情報収集」→「提案」→「商談」→「クロージング」といった営業プロセスにおいてどう行動していくべきか、
を考えていれば良かったといえるでしょう。
ですが、これは、商品・サービスの魅力が前提になっており、そこで大きく差別化できていなければ「面談」すらできない、
あるいは「面談」はできても「情報収集」ができないといった状況に陥ってしまうわけです。

よって、「どうせ売り込みでしょ」、「もうその手の商品は持ってるから」、「会うのが面倒だ」といった顧客の心理状態に、
「なかなか面白い人だな」、「あの人ならアポ受けてやろう」といった変化を促し、
最終的には「頼りになりそう」、「一度何かお願いしてみよう」というところまで持っていけるようなシナリオを持つことが必要になっているのです。

424_6以前ならば「既存顧客の成長に伴って自社も成長する」ことが可能でしたが、
それが難しくなってきた現在、新規開拓は不可欠な要素となってきました。

ただし、やみくもに新規開拓を唱えたところで、思ったような成果は出ないためにどんどん営業マンが疲弊していく、
そんな企業が増えてきています。

「今、何が起きているのか」という視点を持ち、
出来る限り詳細に正しい事実を把握した上で、それを「どう認識するか」が大切です。
そのステップを踏むことによって、「営業力が弱い」ことに関しても効果的な作戦を打てるのではないでしょうか。

(出典:ダイヤモンド・オンライン

川原 慎也
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/攻めるPDCAマネジメント・顧客満足度アップ
外資系自動車メーカーにて営業、マーケティングなどを経験したのち、1998年船井総合研究所に入社。年商1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業態を問わず幅広くコンサルティングを行っている。 PDCAを切り口に現場の行動に変化をもたらし、企業を新たな成長のステージへと導くコンサルティングが近年高い評価を獲得。