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ヤマダ電機が住宅業界に本格参入へ! エス・バイ・エル子会社化で変わる“家電量販店”の姿

8月12日の報道を見て、業界関係者は“ついにその時が来たか”と思ったことだろう。

家電量販店最大手のヤマダ電機が、中堅ハウスメーカー、エス・バイ・エルを連結子会社化するために、
株式の公開買付け(TOB)と第三者割当増資を引き受けると発表したからだ。

■ ヤマダ電機の店舗にモデルハウス? 住宅展示場と比較にならない多大な販促効果

連結子会社化は、各報道機関の記事をまとめると、以下のようにすすめられる。

 [1] TOB価格は1株当たり62円(発表時の株価は58円)
 [2] エス・バイ・エルの上場、自主的経営は維持される
 [3] ヤマダ電機から取締役を派遣
 [4] 10月中旬にはTOBを完了させる

また、家電量販店にモデルハウスを設置し、住宅はもちろん、太陽光発電、蓄電池、省エネ家電、電気自動車なども合わせて販売するそうだ。

モデルハウスは家電量販店内に設置するのか、それとも駐車場などの隣接敷地なのかはわからないが、
いずれにせよ、かなりインパクトのある光景が目に浮かぶ。
住宅展示場の閑散とした光景とは異なり、多くの店舗が土日祝日は、
多くの人でごった返している状況であるから、販促効果は絶大なものになるだろう。

先日、ヤマダ電機の都市郊外にある大型店に行った。
この報道を知った直後であったので、関連があるだろう売り場へ向かった。太陽光発電、省エネ家電などだ。

いずれも、1コーナーの展示であまり大きな売り場ではなく、太陽光発電の売り場では、
社外の専門スタッフが対応していた(この店だけかもしれないが、しかしこの店は旗艦店の1つだと思える)。
他の数店を訪れても似たような状況だった。
現在のヤマダ電機各店では、まだ住宅・エネルギーといった分野への踏み込みは少ないようだ。

このような新しいエネルギーを取り入れた“スマートハウス”は数年前から話題となっており、
認知はされているものの、あまり購買には至っていなかったのが実情だった。

しかし、東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故、節電といった事象を体験してから様相は変わった。
多くの人がスマートハウス(あるいはその一部)の購入を真剣に考え始めている。
今回のヤマダ電機によるエス・バイ・エル子会社化は、こうした状況を捉えての行動であろう。

■ エス・バイ・エルがヤマダ電機の子会社になることで得るメリット

一方、ヤマダ電機の連結子会社になる(現時点では、かもしれない)、エス・バイ・エル。
ヤマダ電機の意向が発表された同日、
「今後の当社の更なる成長と企業価値の向上に資するものであるから、公開買い付けに賛同する」との見解を発表した。

エス・バイ・エルは、いわゆるプレハブ住宅メーカーの中堅に位置する企業だ。

積水ハウス・大和ハウスなどプレハブ系ハウスメーカーと同じく本社は大阪にある。
かつては小堀住建という企業名だった時期が長く、私のような関西出身者にとってはこちらのほうが馴染み深い。
1990年ごろに社名変更し、今のエス・バイ・エル(S×L)となった。

著名なハウスメーカーの中では、一定水準のデザイン性の住宅を安価で提供している企業というイメージがあるが、
最近ではテレビCMなどを見る機会が少なくなり、企業としての勢いにかげりが見えていたのも事実だろう。

そして、それは株価が物語っている。ヤマダ電機の公開買い付けが公表されてからは続伸しているものの、年初来安値は35円。
このところは50円を少し上回る水準だったが、配当、企業業績からして正当な株価だろう。

こうして、ヤマダ電機の思惑と、エス・バイ・エルの逼迫した経営状況から脱出せざるを得ない状況が合致し、“賛同”に至ったのだろう。

■ 人口減少社会の日本において増えることのない新築住宅着工戸数

さて、ハウスメーカーを傘下に収めるヤマダ電機。
当然、1棟でも多く住宅を建てることを目標とするのであろうが、
新設住宅着工戸数が今後伸びることは期待できない(詳細は、「住宅着工戸数100万戸割れ! 半年先も生き残る住宅関連企業の条件」で述べた)。

国土交通省の発表では、2009年度は77万戸、2010年度は金利優遇政策などのおかげで若干持ち直したが、それでも81万戸である。
これから、増えることはほとんどありえないだろう。

その最も大きな理由は、なんといっても人口減少だ。

そして長期的に見て大きな影響を与えると考えられるのが、相続される住宅の増加である。
現在の60~70歳代の方々の多くが住宅を所有しているうえ、子どもの数が減っているので、
親の所有する住居(自分が生まれ育った家)を相続する方がかなり増え、新たな住宅が必要ないのだ。

また、地方都市では空き家率の上昇が問題となっている。
2009年度に総務省が発表した資料によると13%程度(8軒に1軒)が誰も住んでいない空き家で、
中には20%を超える都道府県もあるようだ。

この原因として、バブル崩壊以降も住宅取得をあおるような金利優遇政策、住宅ローン減税など、
新築住宅着工数が減少するのを防ぐ政策を行ってきたことが挙げられる。
その結果、バブル崩壊から15年以上である2008年まで新築住宅着工戸数が100万戸を割り込まなかった。
そして、近年そのツケが出始めている。それが空き家率の上昇なのだ。

■ 「新築スマートハウス」と「省エネ系リフォーム」が商機に!
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こうして考えると、ネガティブな状況ばかりのような気もする。
しかし、一方で新築住宅着工戸数が極端に大きく落ち込むこともないと、私は予想する。

中古住宅の流通は徐々に(かなりゆっくり)増えているとはいえ、
欧米に比べてその割合は(「新築+中古」が分母)低い。
日本人はかつて人が使っていたものを所有するのが好きではない、と言われていることもその要因の1つだ。

しかし、日本も今後は、新築だけではなく、住宅のリフォームに目を向ける人が増えていくことが予想される。
実際、19日の日経新聞には、積水ハウス・ミサワホームがこれまでにも増して、
リフォーム事業に人員をシフトさせ、新しく人員を採用するとあった。

そうした流れにおいても、今回のヤマダ電機のエス・バイ・エル社の連結子会社化は、
新築スマートハウス住宅を提供するだけでなく、省エネ系リフォームにも力を入れることが成果のカギかもしれない。

流通系(=小売業)企業がハウスメーカー(=製造業)を傘下に持つことは、かなり珍しい。ぜひ、成功を祈りたい。

(この記事は2011/08/22に初掲載されたものです。)
(出典:ダイヤモンド・オンライン