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あなたの家を「耐久消費財」から「資産」へイノベート!? マイホームの価値を最大化させる2つの視点

これまで日本の住宅は、欧米諸国と比較しても、「資産」ではなく「耐久消費財」として扱われてきたといえる。それは、20年も経てばその価値が限りなくゼロに近づくためだ。しかしこれまで、その「耐久消費財」に対して、多額の住宅ローンをかけて購入するのが、戦後日本のサラリーマンの一般的なスタイルとなっていた。

これは経済的に見れば、レバレッジをかけて不動産に投資することと同じである。ただ、その投資先は、不動産投資信託(REIT)でさえ、複数の不動産に分散しているのに対して、私たちサラリーマンの場合、マイホームである1つの不動産に集中しており、非常にリスクが大きい。

これらリスクが大きいと思われる「投資」を成立させていた背景には、次の3つの神話があったといえるだろう。地価は上昇し続けるという「土地神話」、護送船団方式により大企業はつぶれないという「企業神話」、老後は国が守ってくれるという「年金神話」の3つだ。逆に言えばこれら3つの神話が、集中投資によるリスクを見えなくさせていたといえる。そして今、いずれの神話も崩壊、もしくは崩壊一歩手前の状態にある。

リーマンショック、東日本大震災を経験した私たちは、改めてリスクや不確実性の恐ろしさを痛感している。とはいえ、すでにマイホームをお持ちの方は、いまさら「賃貸」という選択肢をとることは現実的ではなく、現在の住宅の価値を高めていくことが最も重要だ。そこで今回は、現在、マイホームをお持ちの皆様に向けた資産価値を最大化させるための「賢いマイホームの扱い方」について、経営コンサルタントの視点から整理してみたい。

■ 「耐久消費財」から「資産」へ! リフォームでは「美人投票」を意識しよう

まず、マイホームの資産価値を高めるためには、マイホームを従来のように「耐久消費財」と考えるのではなく、「資産」として捉える必要がある。そして、住宅の「耐久消費財から資産化へ」のプロセスにおいては、その価値をいかに正しく維持し続けるかという視点を持つことが重要である。

テレビやパソコン、車といった代表的な耐久消費財でさえ、故障がでれば修理を行なう上、故障が発生しないよう定期的なメンテナンス(チェック)を実施するケースも多い。それと比較すると、住宅の場合はどうであろう。日常的に家のメンテナンスについて、気を配っている人は未だに少ない。

強いて言うならば、経年劣化を補填する修理・営繕やリフォームなどがこれらに該当するが、必要性に迫られた修理・営繕リフォーム、または自分の好みや価値観のみを追求したリフォームが資産価値を維持・向上させる行為に繋がるのかというと、実はそうではないケースも多い。

資産価値を意識する際には、必ずそこに第三者による客観的な視点を意識したい。すなわち、この家を借りたい人、または、この家を中古で購入したい人がいると仮定した場合、どのようなリフォームを実施すればより高い賃料を得られ、またより高い価格での売却を可能にするのかという視点を持つことである。

収益還元法による不動産価値評価の手法を意識すれば、賃貸化のケースも売却のケースも同じ視点に収斂される。したがって、マイホームの資産価値とは、その家から生み出させる将来キャッシュフローの現在価値の合計であるという視点である。

キャッシュフローのトップラインは、言うまでもなく賃料収入である。例えば、家賃が月12万円、月の諸経費が2万円とすると月次のキャッシュフローが10万円。よって年間のキャッシュフローは120万円。この年間120万円のキャッシュフローが永久的に見込めると仮定して、割引率(キャップレート)を5%と置くと、120万を5%で除する事で求められる2400万円がこの物件の資産価値。これが最も簡易な収益還元法を活用した不動産価格の算出方法となる。つまり、「不動産が生み出す価値=賃料」を意識する事が重要な視点であるといえるだろう。

そうすると、資産価値向上を意識したリフォームとは、株式市場における投資家の行動パターンを表す際によく引用されるケインズの例え言葉、「美人投票」を意識する必要がある。自分が住みたい家、借りたい家という概念が必ずしも市場(賃貸住宅市場、中古住宅市場)で支持されるとは限らないという事だ。また、短期的なトレンドや人気は、中長期的には廃れやすいという点も忘れてはならないという事などである。
リフォームを実施する際には、このような視点も意識して、業者を選定することをおすすめしたい。そもそもリフォーム業界は、[1]参入・退出コストが低い、[2]規模の経済が効きにくい、[3]現場訪問型小商圏モデル等の理由により、規模の小さな企業が乱立し、市場のシェアや技術を占有するプレーヤーが生まれにくい「市場・分散型業界」の典型となっている。リフォーム会社で、自動車業界のトヨタやビール業界のキリン、アサヒといったような代表的なプレーヤーがすぐに想起できないことでも、それは証明される。

したがって、私たちは、リフォーム業界に対してある程度、自らの視点で良い業者を選別する力を養う事が不可欠なのである。その1つの切り口として、この「資産価値向上の観点からのリフォーム」、すなわち「将来キャッシュフロー増大のためのリフォーム」を意識、提案できる業者かどうかという観点は、今後より重要なポイントになるのではないだろうか。

■ 売却する最適なタイミングがわかる!? 相場、トレンドを把握できる「東証住宅価格指数」

では、次に実際に資産価値を高めた住宅を売却する出口の市場である中古住宅流通市場は、その価値を正しく評価する機能を有していると言えるのだろうか。また、最も資産価値を高めるうえで最適な売却のタイミングは知り得るのだろうか。

それは株式市場と比較してみるとわかりやすい。株式市場と最も大きな相違点は、不動産取引のほとんどは(REITを除く)相対取引であり、取引所を介して不特定多数で取引を行なう市場取引とは異なるという点である。

それにより、他の投資商品に比べ、未だ不透明であり閉鎖的で、かつ、最終的には不動産会社が購入希望者を相対で探すというように、属人的な側面を多分に持つ市場であるといわざるを得ない。

さらに、流動性も高くないため、換金できるまでの期間も、早くても1~2ヵ月、長ければ半年以上かかる場合もある。しかも、売り急ぎの場合など、短期間で資金化しようとすればするほど相場より安くなる可能性がある一方、逆に時間をかけたからといって高い値段で売れるとも限らない。このあたりが不動産の相対取引の難しい側面でもある。

このような背景から、これまで中古不動産の価値を正しく評価する機能や仕組みは、成立しにくい環境にあったといえる。結果、不動産価格全体の相場、トレンドもプロの専門家の肌感覚的なもの以外では捉えることができず、素人の売り手・買い手は常にエージェンシー問題(代理人である不動産会社が本当に依頼主である私の利益最大化の為に働くかどうか)を抱える事となる。

加えて、不動産会社は同時に売り手と買い手の双方の代理人となる事が可能であるため、そこには常に利益相反(売り手は「高く売りたい」、買い手は「安く買いたい」という基本的な交渉対立が存在する)という問題も指摘され続けてきた。

このような環境下では、ただでさえ新築嗜好の強い日本人の特性を助長させる事はあっても、中古住宅市場を活性化させる要因はみつからないだろう。

しかし、ここにきて、少しずつではあるが、その中古流通市場も整備されつつある。少なくとも国も業界団体も、中古住宅流通市場活性化のために、仕組みの整備が必要不可欠であることに気づき始めている。

その中で、最近、最も象徴的なものとして挙げられるのは、未だ試験運用という形ではあるが東京証券取引所が発表している「東証住宅価格指数」である。これは、今のところ首都圏の中古マンションに限定されてはいるが、財団法人東日本不動産流通機構(通称レイズ)に登録された中古マンションの成約情報を活用して、同質性を有する物件の価格変化に基づいて算出される価格指数である。

具体的には2000年1月の首都圏における中古マンションの価格水準を100とし、過去は93年6月までさかのぼり、最新のデータについては各月末までに成約した価格に基づいて算出した指数値を当該月の2ヵ月後に公表されるという形式だ。

例えば、先日6月28日に発表された最新版は2011年4月の指数。首都圏総合で82.16という値である。この値が示すものは、不動産取引が取引市場のない相対取引であるが故に、指標化できなかった不動産価格全体のトレンドである。

つまり、この値の発表が意味するところは、株式投資でいう日経平均株価や東証TOPIXのような、今の市場全体の相場観や過去からのトレンド変化を把握できるという、不動産価格のインデックスの開発に他ならないのである。

不動産価格インデックスが明らかになると、相場観が定量的に視える化できる上、不動産市場全体としての期待利回り(マーケットリスクプレミアム)についてもある程度、明らかになるといえる。そうすると先ほど挙げた収益還元法で不動産価格を算出する上での分母、つまり割引率(キャップレート=先ほどの事例では5%と仮定)についてもある程度市場全体との関係性の中で、その妥当性を確認することができる。

このように、不動産価格インデックスの開発は、中古流通市場の整備を進める上で極めて重要な取組だと思われる。中古不動産の価格動向を把握できる上、適正な不動産価格の算出に対しても大きな役割を担うと言えるからである。マイホームを最適なタイミングでかつ、その時の適正な価格で売却するという売り手の視点で見ても、このような市場の整備は大歓迎である。

不動産流通業界もまた、前述したリフォーム業界と同様、中小企業が多数乱立する「市場分散型業界」といえる。これまで、業者と売り手、買い手との情報格差が大きいがゆえに、先ほど挙げたエージェンシー問題や利益相反問題、また中古市場には良く言われることではあるが「レモン市場」(財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場)に陥りやすい環境にあるといった、いくつかの課題を抱えながら市場は拡大してきたといえる。

しかし、市場や制度の整備が進む事でこのような問題も今後徐々に解消される事が期待され、私たちの大切なマイホームを安心して売却できる環境も整いつつある。マイホームを「資産」として捉える上では、最後の出口である売却に関する環境整備も非常に重要なファクターであるといえるだろう。

以上、私たちの大切なマイホームを「耐久消費財」から「資産」にイノベートする上で必要な2つの視点、[1]第三者(借り手や買い手)の視点を意識した「賃料」に反映されやすいリフォームの実施、[2]売却の最適なタイミングと適正価格に対する理解、について、現状の市場・業界環境を踏まえた上で整理した。以前に比べ、マイホームを持った際のリスクが大きく顕在化されつつある今、私たちは常にこのような視点を持って自らのバランスシートに対するリスクマネジメントを実施する事が不可欠といえるだろう。
(出典:ダイヤモンド・オンライン)