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「今が買い時」に乗せられるな! 2010年マンション価格はここまで下がる

「今、マンションは『買い時』なのか?」

こうした質問をよく受ける。価格的には今が底なのか。あるいは、これからもっと下がるのか――。マンション購入希望者なら、誰しもが気になるところだ。

マンション開発は1つあたりのプロジェクト規模が大きいため、日本経済に与える影響が大きい。今回は、そんなマンション業界の半年先をよんでいきたい。

■ “あの穴吹工務店”まで倒産! マンションディベロッパーの苦境

一昨年から昨年にかけて多くのマンションディベロッパーが倒産した。特に新興系のマンションディベロッパーを中心に厳しい経営環境が続いた。その中でも日本総合地所、モリモトなど大手と呼べるほどに成長した企業までもが、会社更生法を適用された。そして、昨年の11月には2007年の供給戸数1位、2008年3位だった強者デベロッパーである穴吹工務店が倒産した。

穴吹工務店は地方都市や郊外地域に強く、ファミリー向けのオーソドックスな間取りや価格において、顧客から支持を受けていた。経営陣の内紛、資金繰り、銀行との融資の問題など、主たる会社更生法適用の理由はさだかではないが、“あの穴吹工務店までも、ついに!”と業界内外から驚きの声が聞こえた。

私が責任者を務める船井総合研究所リアルエステートビジネスチームが日々更新している、住宅・不動産業界トピックスを中心に掲載しているブログにおいて、穴吹工務店会社更生法の申請について、記者発表の数時間前に掲載したところ、アクセスが殺到。そして、その影響について、数日間に分けて掲載したが、どれも反響が大きかった。

■ ピーク時の36%にまで落ち込んだマンション市場

首都圏(1都3県)のマンション供給戸数は05年以降、減少し続けている。不動産経済研究所によると、06年が7.4万戸、07年が6.1万戸、08年が4.3万戸、そして昨年(09年)はついに3.6万戸(前年対比16.8%)にまで落ち込んだ。09年の数字は、後半若干持ち直しての数字であり、上期の数字は特に悪いものだった。最高値を記録した2000年9.5万戸の37%という実績だ。

2009年の首都圏におけるマンション市場規模は、契約数×平均単価(販売価格ベース)で計算すると約1.1兆円、全国の約60%が首都圏で販売されていると言われているから、日本全体の市場は1.1兆円÷0.6=約1.8兆円だと推測できる。ここ20年間でもっともマンションが売れた2000年の実績は、首都圏で約3兆円、全国で約5兆円のマンション市場規模だった(計算方法は同様)。比較すると、2009年の市場はピーク時から-64%となっている。これでは、多くの企業が倒産という現状になるのは仕方のないことだといえる。

一方、中古マンションの販売数は大きく伸びている。首都圏における09年の販売数(流通数)は3万戸を越えた。この実績は、データを発表している東日本レインズが設立された1990年以降最高値である。このように首都圏においては、新築マンションの数と中古マンションの販売(流通)戸数が拮抗する状態に近づいている。さらに、中古物件の価格は新築物件の値下がりなどの影響からか、前年対比4.3%の減となった。

■ 在庫調整が一巡、2010年新築マンションは増加?

では、2010年の供給戸数はどうなるのだろうか。

私どもでは、2010年の首都圏マンション供給戸数は、10%~20%割程度増えるものと予測している。これは、いくつかの機関が発表している数値に近い。

いくつかその理由を考えてみよう。

【1】 アウトレットマンション(大量の在庫処分に困ったデベロッパーや経営破たんしたデベロッパーから格安で買い取った再販会社が販売するマンション)という言葉が一般化した年でもあった2009年。アウトレットマンションを含めた在庫物件は2009年年初には約12000戸といわれていたが、2009年の末ごろには約7000戸弱にまで減った。現在は、こうした在庫調整がほぼ終わったと見ていいだろう。在庫数が減ったとき、各デベロッパーは新規物件へ動き出す。

1990年~2009年11月までの在庫数と着工数の推移を見ると、この傾向は一目瞭然だ。

332_2「今が買い時」に乗せられるな! 2010年マンション価格はここまで下がる

2007年中頃の建築基準法の改正による大きな落ち込み(建築確認申請の滞りによる)とその反動の2008年の大幅増はイレギュラーであるが、この20年間常にこうした傾向が見て取れる。

【2】 大量の在庫を抱えていたことによる工事中止物件や延期物件が復活進行し始めている。

【3】 契約率(当月契約戸数/当月発売戸数)は、2009年5月以降、70%以上で推移している。これは、販売好調の目安値を越えている。このような新築マンション供給戸数が増える。

これも、グラフで見ればはっきりする。(ここでも図1で述べたように、2007~2008年はイレギュラーの期間)

332_3「今が買い時」に乗せられるな! 2010年マンション価格はここまで下がる

■ マンション不況の中も急成長した「買取再販会社」強さの秘密

深刻なマンション不況の中、成長を遂げたマンション関連企業もある。それは、買取再販会社だ。このタイミングで創業や新たな部署を設立した企業もあり、以前から再販ビジネスを展開している企業では、20%以上業績向上した事例もある。

先に述べたように、2009年はアウトレットマンションという言葉が広まった。アウトレットモールにおいては、ブランド品などが、B級品やワケ有品、半端品などとして販売され、消費者においても“安いんだったら、いいんじゃない”という感覚で買っている。

マンションの場合は、倒産した企業の在庫など、ネガティブな要素がある物件だけでなく、一般のマンションディベロッパーが残り物件が少なくなった時に、営業マン人件費、モデルルーム維持費を考慮して、在庫一掃として一気に売却されたものも多い。

注意しておかねばならないことは(一般的な場合)、販売代理の場合と異なり、いったん再販会社が購入したものを(所有権が移転する)を購入するということだ。“人が住んでいない”という意味では中古マンションと異なるが、“所有する”という観点で見れば、セカンドユーザーとなる。

それを承知して買うことになるのだが、お得感があり大量に売れた。先に述べた在庫調整に一役買ったのだ。

しかし、すべてのアウトレットマンションで、大幅な値引きをして販売しているわけではない。もちろん新築よりも大幅に安い場合もあるのだが、中にはわずかな値引額で販売している会社もある。再販会社は、物件仕入れ力だけでなく、販売力の強さを武器に台頭してきたのだ。

■ 「営業力に頼らない販売」で失ったマンションディベロッパーの信頼

多くのマンションディベロッパーは、営業担当者の人的な力に頼らない販売戦略構築に力を注いできた。プロモーションにお金をかけ、集客に力を入れた。そして、モデルルームにおける案内フローやトーク、クロージングパターンを細かく作成し、営業担当者のレベルを平準化させた。

かつて、ある企業の経営者から“中学生にでも売れる”販売モデルの構築を打診されたことがある。営業系出身のこの経営者は、『営業マンの育成は時間もかかるし、成果が上がらないことも多い。それだったら、営業力に頼らないマンション販売をしたい』 と言われ、初めてお会いしたときに、幾度も“中学生でも売れる”というセリフを言われた。

こうした傾向が、2000年以降続き、営業担当者自身が持つ販売力が落ちていたのではないかと推測できる。販売を担当する営業担当者というより、モデルルームに来たお客を案内する案内係り、そして契約を交わす事務員、その2つの業務を行なうのが営業担当者だった。

顧客のニーズを引き出し、タイミングを見てクロージングをする。そんな営業担当者が本来すべきことに力を注いでいなかった――。景気悪化が本格化した2008年以降一気にモデルルームへの集客が減った。そこには営業担当者ではなく、案内係りがいた。こうして考えると、マンションの契約率低下の原因は、景気の悪化だけではないようだ。

このようなデベロッパーの状況が、販売力のある再販会社の台頭をうながしたと言っても過言ではない。

しかし、先に述べたように在庫数が2009年初めから年末にかけて半数近くにまで減ってきたこともあり、多くの買取再販会社は仕入れに苦慮している。そうした状況を見ると、再販会社の苦労が始まるのかもしれない。

■ 2010年供給戸数は増加マンション価格は下がる!?

2008年から2009年にかけて、首都圏のマンション価格の平均値は、約14%下がった。2010年は、さらに下がると予想する。そして、供給戸数の増加は確実であろう。

土地・資材などの値段が大きく下がっている状態にあり、直接的な原価がさがっていることが第1の理由。そして、プロモーション費用が下がる。承知のとおり、現在マス媒体広告は激減しており、TV・新聞・雑誌等の広告価格が信じられないような安価で推移している。また、マンション販売においては、広告代理店がモデルルームやカタログ、プロモーションまで大きくかかわっているが、どこも火の車であり、大きく値下げして受注する状態にある。これらが第2の理由だ。

このように直接原価・販売経費とも大幅に低くなる。マンションディベロッパー各社は、それを価格に反映させることはまちがいない。

また、上場ディベロッパー各社は2010年度こそは、株式市場によい決算報告をしたいと考えている。2008・2009年は厳しい決算であった会社が多いから、「3期連続の厳しい状況は避けたい」というのが企業の本音だろう。価格を安くおさえることによって、「即日完売」や一気に売り抜けたいと考えている企業が多い。

以上のことから、今年は思い切った価格を提示する企業が増えるのではないか。

こう考えると、今年の春先から秋に発売されるマンション価格はこれまでより割安感がでるだろう。もし、住みたいエリアに安心できる企業の物件が発売されたとなれば、“買い”ではないだろうか。

(この記事は2010/02/19に初掲載されたものです。)