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実行戦略策定の重要性

私どものグループの戦略構築コンサルティングにおきまして、もっとも重要視しているポイントとして“実行戦略の策定”があります。戦略を実行するステップを、【戦略構築】→【実行戦略策定】→【戦略の展開】→【戦略の定着】と考えており、2つめの部分にあたります。これは、立案した戦略が正しいということは理解できるけれども、いざ組織の中に展開するとなると途中で頓挫してしまうことが多い」といった問題をいかにして解決するのかという課題に対しての答だと位置づけています。
そもそも、何故“正しい戦略”が機能しないといった状態に陥ってしまうのでしょうか?いくつかの問題点は容易に想像できると思われますが、最大の問題は2つに集約されます。ひとつは、展開フェーズで現場に何が起こるのかといった予測が不十分なことであり、もうひとつは実際に業績を向上するKEYとなる活動レベルまでブレイクダウン(具体化)できていないことです。

電機メーカーA社で“開発スピードのアップ”にフォーカスしたコンサルティングを実施していたときのお話をしましょう。A社には、私どもの前に某コンサルティングファームがつくった開発プロセスマップがあるのですが、そのプロセスマップに則って開発できた案件は2年間で0件。そのマップ自体は完成度が高く、問題があるとは思えませんでした。しかしながら、問題を紐解いていくと大きくは2つの問題があることがわかりました。
ひとつは、開発工程を3つのプロセスに分解しているのですが、それぞれのプロセスで主幹部署が変わるシステムになっており、結果としてひとつの開発案件を総括的に見る担当が存在しないことです。それぞれのプロセスについて、各主幹部署が責任をもってやれば問題は出ないと考えてしまいますが、プロセスとプロセスをつなぐ部分でどうしても小さな問題が出てきてしまい、前のプロセスを主管する部署は「もう次のプロセスに移行しているはず」、次のプロセスを主管する部署は「これらの問題が解決されない限りプロセスの移行は受けられない」といった行き違いが頻発している状況でした。もうひとつは、エンドユーザーのニーズを開発に活かす目的で営業からの案件提出を促進しているのですが、その製品を市場に出した場合の売上予測を営業が記入するという仕組みになっており、売上予測の根拠が不十分なために案件を差し戻すことが常態化していました。加えて、案件を出すという活動に対して営業を評価する指標が存在しないこと等の影響もあり、案件そのものが挙がってこなくなるという結果に陥っていました。
このように文章にしてみると、「何だ、そうなるのは当然じゃないか」といった意見が出てきそうですが、これらは典型的な『方針制約』の事例だと言えます。これは社内の規定・制度や組織構造などのマネジメントの仕組み、あるいは企業文化や風土といった広範囲に及びます。社内にいる人間にとっては当たり前だと考えていることが阻害要因だという話ですから、解決するのは容易な話ではありません。つまり、どのような企業でも気づかないうちに普通に起きている問題だと言えるのではないでしょうか。

ちなみに『方針制約』とは、TOC(Theory of Constraints)の理論上、目的達成を阻害する3つの制約条件(物理的制約、方針制約、市場制約)のうちのひとつ。TOCコンサルティングについては、次の機会に紹介させていただきます。

電材メーカーB社は、営業スタッフの行動分析より営業プロセスを4つに分解(【案件創出活動】→【見込み客フォロー活動】→【商談活動】→【受注】)したプロセスマネジメントの手法を採り入れていました。主にそれぞれの数値実績をみながら、考えられる問題点を指導していくシステムです。しかしながら、なかなか思うような効果が得られないといった状況のなか“営業戦略の再構築”というテーマでコンサルティングを開始しました。
営業プロセスの1st.ステップは、見込み客を発掘するためにどれだけのターゲットに会っているかという件数で、多ければ多いほど良いという評価指標でしたが、実はそこに問題があることがわかったのです。分析の結果、まずB社の商品群を大きく2つに分類(独自性が高く競合があまりいない商品群と独自性がなく競合の激しい商品群)しました。独自性の高い商品で実績を上げるためには、ターゲットを緻密にセグメントして質の高いプレゼンテーションを実施することが必要で、セグメントを正確に行えば実は営業効率の高い商品でした。しかし、まず数を多く当たっていくことを重視したプロセスマネジメント手法では、そういったことがカバーされずに結果として効果が出なかったという訳です。

これらの事例の解決策は、おそらく想像いただけるのではないかと思ったので省略します。まずは“実行戦略策定”の重要性を認識していただき、今後の実務に活かしていただければと思います。