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エンターテインメント・ビジネスから顧客満足を考える[マーケティング戦略・営業戦略]

こんにちは船井総合研究所の小林昇太郎です。

皆さんは小林一三(こばやし いちぞう)という方をご存知でしょうか。1873年(明治6年)~1957年(昭和32年)を生きた日本の実業家ですが、阪急グループの創業者でもあり、あの宝塚歌劇団の創設者としても有名です。

先日、この小林一三の2大事業でもある、鉄道敷設、宝塚歌劇団創設の背景について触れる機会がありました。

その際、明治から昭和初期を生きた事業家であるにも関わらず、その時に彼自身が考えていた事業を創業、成長させていく際の価値観や考え方は、現在でも全く古臭さを感じさせないものでした。それどころか、今のビジネスを考えるにあたり、共感し、参考とすべき点が多くあると考えます。
先ず鉄道敷設についてですが、彼自身、最初に鉄道に関連した事業に携わったのは、1907年の箕面有馬電気軌道株式会社の創立の追加発起人になったところから始まったようです。

通常、鉄道を敷設する場合は既にある都市や町をつなぐというのが一般的ですが、当時この鉄道が敷設された場所は大きな町などがあるわけでもなく社会的にもそれほど期待されていない地域であったようです。

しかし、ここから小林一三の類稀なる商才が存分に発揮されていくことになります。

ここで彼が行なったことを挙げていくと、先ず鉄道の沿線開発です。現段階で何もないのであれば、まち(暮らしのある場所)をつくってしまおうと沿線に良質な住宅の販売による、新しいライフスタイルを創造しようと考え、実行していきます。この時、消費者が住宅を取得しやすくする工夫が必要と我が国最初の住宅ローンを開始したり、我が国最初のPR誌の発行などを行ないました。

次に、住宅をつくるだけでなく、住民が楽しめる場所もということで箕面動物園や宝塚新温泉といったアミューズメント施設を数多く建設していきました。

また、鉄道の駅ビルの中に買い物ができる場所をつくることとあわせ、単にそういった場を買い物をすることだけで終わらせるのではなく、ここでも「楽しむ」ということを意識しながら、鉄道を使って人が集まる魅力的な場所を作り続けていきます。

鉄道、住宅、商業施設、アミューズメント施設などを作っていく際、彼自身は常に大衆をターゲットにしたビジネスを展開していきました。そして彼がこだわった、いかに大衆を楽しませることができるかという考えからの顧客満足の徹底的な追及の先に、エンターテインメントの要素を踏まえたビジネスの成功があったのだと思います。
この大衆向けビジネスの一つに皆さんがよくご存知の宝塚歌劇団の創設があります。

そもそも宝塚歌劇団の創設は、アミューズメント施設の一つである室内水泳場の閉鎖がきっかけでした。

もともと作家志望でもあった小林一三は、日本初の国民劇を作りたいと考えており、ここでも「人を楽しませ、自分も楽しむ」といった考えのもと、主に女性客をターゲットに低料金で家族で楽しむ大衆娯楽としての位置づけとしています。

宝塚は今でも女性を中心に根強い人気を誇っていますが、当時、彼は歌舞伎に代わる新趣向の大衆娯楽として西洋風を意識して創りあげました。

ここで彼が取った発想で私が大変興味深く、面白いと感じたのは宝塚歌劇団のモットーとして掲げられている、「清く、正しく、美しく」を、単に宝塚歌劇団のスタッフだけが意識するのではなく、スタッフと共にその観客をも一緒にこのモットーを掲げながら、共に「育っていく」という仕組を確立させていることです。

この仕組を具現化させるために、宝塚歌劇団では様々な工夫を施してきていますが、世界でも類のない宝塚音楽歌劇学校もその一つです。このシステムにより、顧客は宝塚の生徒を入学当時から知り、その生徒が徐々に成長していく姿を見ながら、顧客自身もその生徒の成長に関わっていることを実感させながら楽しんでもらうことで、長くファンとして定着させることを可能にしています。

ファンがお気に入りのスタッフのお弁当をいつも差し入れているといったこともこの一つでしょう。宝塚歌劇団に見られる、スタッフとコアの顧客が定期的にコミュニケーションを取りながら、徹底的に深くつきあい、歌劇を楽しみながら顧客自身に歌劇団のスタッフとの一体感を持たせていくことが、このビジネスの主要な成功要因の一つとなっています。
これら小林一三の創りあげたビジネスモデルから、この厳しい市場の中においても収益を出し続けるためのヒントをいくつか見つけることができるのではないでしょうか。

ここでは、お客様との「共存共栄」が一つ重要なキーワードになると思いますが、では我々自身どのようにそれを実現していくべきか。

それを考えるにあたっては、本当に我々は顧客の満足や顧客の楽しみ、顧客の実現したいことを理解した上で現在の業務を遂行できているのでしょうか。

また、顕在化した顧客の要望に応えるだけでなく、潜在化したニーズの汲み上げや新たなニーズを創りあげていくことができているでしょうか。

これを実現していく上で、いつもと少し視点を変えて、小林一三のように人や自分を楽しませるには何が必要かといった切り口から現在のご自身のビジネスを考えてみると、新たなヒントが得られるかもしれません。