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消費変革は静寂の中で進行する

「不況」という言葉が日常会話の中で定着してしまっている昨今ですが、自力で打開していく強い意志を持たない企業が淘汰されていくようです。

現在の不況は金融業界から始まったと言われておりますが、流通業では顧客が外部環境の変化に適応して、消費行動そのものを変革させていったと見るべきでしょう。

モノの価値の見極めが大きく変わり、コモディティ化が進んでいく流れが強く現れているものと思われます。景気が悪いからモノが売れないのではなく、モノに対する判断基準そのもの、つまり価値判断の基準が変革していると判断すべきではないでしょうか。

主に機能価値(対象品が持つ本来機能などの実用性)で判断し、情緒的価値(デザイン、付加機能等)に価値を感じない客層が増加していくと考える方がよいと思います。

イオングループなどの流通大手各社のPB強化方針も、この流れを見据えたものと言えるでしょう。モノを安くしなければ売れないのではなく、「どこにでもあるものは安く、どこにもないものは高く」という当たり前のことを再考する必要があります。

顧客は明確な問題意識を持って買い方を変えていくことは少なく、生物の進化のごとく極めて緩やかに変革していきます。一見、ある転換点を迎えた瞬間に劇的に進化するように見えますが、その前の僅かな変化は見えないものです。
例えば、高齢化とともに消費意欲が減退していくように言われていますが、単純に店舗に買い物に行きにくい状態が、買い物をする範囲を縮小し、コモディティ化を加速している可能性を考えてみましょう。

核家族化している中で、ガソリンが高騰していくと、無理に遠くに行く必要のない高齢者は、節約のために乗用車を手放します。結果的に、遠距離移動の自由度が低下するため、近隣で生活用品を賄う傾向が強まることになりますが、小商圏型店舗では最低限のラインアップに絞り込まれています。

このような環境の中で、贅沢品との接点がなくなっても、生活に影響がほとんどないことを学習することで、さらに実用品志向が強まり、商圏が縮小するといった連鎖が進んでいきます。

高齢者は親しくわずらわしさを感じなくてすむ(遠慮の要らない)店舗を好む傾向が強く、固定化しやすい傾向があると言われていますので、足を運ぶ回数が多くなるほど、近隣から離れなくなり、高齢者を中心に小商圏化が加速していく可能性は高いと言えるでしょう。

変革は静寂の中で密かに進行し、気づいた時には全く異なる状況に変わっているものてあり、本質を見失わない努力が必要です。
【変革は前時代の悪習を駆逐するもの】

昨今よく見られる小売業の会員制度は、ポイントカードから発展した顧客還元型であり、多くの場合には割引対応がハウスカードの前提となっています。全体に対して割引を適用するがゆえに、会員に対する個別対応サービスに関しては、積極的に実施されておらず、カードを通じて来店動機を高めることについては、モノ売り以上のことはさほど実施されていないと思われます。

家電業界を筆頭に、数多くの企業がポイント合戦を実施していますが、単なる消耗戦を続けているようにしか見えない状況です。ポイント還元は、全体のパイが大きくなる中での競争戦略の一部であり、前時代の悪習と言えるのではないでしょうか。

商圏が縮小し、コモディティ化が進行するにつれ、新たなサービスが生まれてくるはずです。

歴史上の革命では、前政権の悪い慣例を駆逐し、大きな変革がなされました。昨今の消費変革が時代の流れだとするならば、誰もがわかる悪習は駆逐される気がしてなりません。

出口が見えない今こそ、顧客が真に望むサービスを極めていきたいものです。