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待ち時間を売るUSJ[マーケティング戦略・営業戦略]

(コミュニケーション研究所 代表 竹林 篤実)

USJの新しいサービスが好調だ。題して「食べ乗りキャンペーン」、お客さんはレストランで食事しながら、アトラクションの待ち時間を過ごすことができる。一方でUSJもちゃっかり稼いでいるのだ。

■ 待ち時間120分

土日にこれからの夏休みともなれば、USJにはたくさんの人が集まる。人気のアトラクションには、どこまで続いているのかわからないぐらいの行列ができるだろう。真夏の炎天下など、日射病の心配をしなければならないほどだ。

そんなにまでして並ぶのはイヤだという人のためにUSJは、「エキスプレス・パス」という『横入り』チケットを用意している。これは入場料5800円に加えて5200円の追加料金を支払えば、7種類のアトラクションをほとんど待たずに楽しめる特別チケットである。

■ 「食事時間」を「待ち時間」としてカウントする

誰だって、行列に並ぶのはイヤだろう。とはいえ、入場料とほぼ同じだけの追加料金を払ってまで『エキスプレス・パス』を買うのも悔しい。何とかならないか、という人のためにUSJが一昨年夏から始めたサービスが「食べ乗りキャンペーン」である。

これを利用したいお客さんは、園内のどこかのレストランに入って、優先搭乗券付きの食事を注文する。すると食事料金に割増し代金が加算されるのだが、その代わりに「現在の待ち時間だけ時間が経ってから」使用できる搭乗券をもらえるというシステムになっている。

つまりお客さんからすれば、ただぼーっと立って待っている時間を、涼しいところで食事を楽しむ時間に変えることができるわけだ。しかもその食事を楽しんでいる時間は、行列に並んでいるものとしてきっちりカウントされる。だから、食事が終われば、ただちに希望のアトラクションを楽しむことができる。実にストレスレスである。

■ 待ち時間を売る

このシステムをUSJサイドから見ると、どうなるのか。行列に並んでいる間は、基本的にお客さんは何も消費してくれない。そりゃ暑けりゃジュースの一本も飲んでくれるかもしれないが、せいぜいその程度である。本当は行列になぞ並んでいずに、お土産物を買ったり、レストランで食事をしたりしてほしいのである。じゃないと入場料以外の売上が上がらない。

元はといえば『エキスプレス・パス』にもパス自体の売上はもちろん、さっさとアトラクションを楽しんだ(しかも待ち時間なく快適に過ごせて気分がよくなっている)お客さんに、ゆっくりじっくり土産物ショッピングを楽しんでもらって売上アップ、といった狙いがあったはずだ。

しかし、誰もが『エキスプレス・パス』を買ってくれるわけではない。そこで考えた二の矢が、この「食べ乗りキャンペーン」なのだろう。

■ ながら時間消費で稼ぐ

うまいなと思うのは『エキスプレス・パス』同様に、時間価値を重視する今のお客さん心理をきっちりとついていることころ。誰だって待ち時間なんて、なければ良いに決まっているのだ。仮にどうしても待っていなければならないのなら、その時間を有意義に少しでも有意義に過ごしたいと思うはず。それなら食事をしていただきましょうというわけだ。

であるなら、食事をしていただきましょうの「食事」の替わりに、○○を入れたとしても、このサービスは成立するはずだ。特に土日や夏休みなどにお付き合いで(というかおサイフ代わりに)引っ張り出されるおじいちゃん、おばあちゃん向けに考えられるサービスなら、すぐに思いつくものがいくつもあるんじゃないだろうか。
いずれにしても「待ち時間を売る」というのは、これからのマーケティングでは忘れてはならない視点だと思う。待ち時間をいかに楽しませるかというのが、これまでの発想だったとしたら、待ち時間まで売ってしまえというのは、明らかに次元の異なる考え方だ。USJ、意外にやるのである。

※文中でふれた内容については下記を参考にしました。
日経MJ新聞2008年6月30日
(この記事は2009年4月5日に初掲載されたものです。)

【記事提供元】
INSIGHT NOW!(インサイトナウ)