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爽健美茶VS.潤る茶:コンビニの棚からみた茶系飲料の戦い[マーケティング戦略・営業戦略]

(有限会社金森マーケティング事務所 取締役 金森 努)

コンビニの棚は各社の戦いの最前線である。茶系飲料の市場縮小が続く中、今日も生き残りをかけたギリギリの戦いが続いているのだ。

コンビニの飲料ケースの棚を見ると、キリンビバレッジの「潤る茶(うるるちゃ)」のパッケージ変更に気付く。CMで仲間由紀恵が「うるおう理由は、素材にあったんだ」と言うその素材がパッケージにズラリと13種類。「潤う」をイメージさせるしずくの形で表現されている。
茶系飲料の中でこのような、多数の素材を用いた「ブレンド茶飲料」の戦いは現状、日本コカ・コーラの一人勝ちに近い。しかし、ブレンド茶系飲料の元祖は十六茶だ。1985年に他社から発売され、93年からアサヒ飲料が発売元となり、缶・ペット容器入り飲料として発売。大ヒットとなった。その93年に対抗馬として上市されたのが日本コカ・コーラの「爽健美茶」である。

飲料業界第一位の同社は、業界リーダーの戦略の王道である「同質化」が得意だ。下位のポジションにある企業のヒット商品の特性に、優れた開発力ですぐに追随。上市後、先行商品の存在をかき消すように、強大な販売力で市場を席巻する。スポーツ飲料カテゴリーにおける、大塚製薬の「ポカリスェット」に同質化戦略をしかけた「アクエリアス」も同社の製品である。

93年に「茶流彩彩」ブランドでスタートした爽健美茶は99年に単独ブランドとして独立。大ヒットとなり、ブレンド茶飲料におけるシェアの7割超をおさえている。

ランチェスター戦略の研究者、B.O.クープマンの研究によれば、その業界やカテゴリーにおいてシェアの73.9%を握ると「独占的シェア」といわれるポジションになり、短期的には首位のポジションを奪われることがあり得ない、絶対的な安定シェアであることを意味しているという。実に、その数字に極めて近い。シェアを奪われ、2位に転落した十六茶の姿は、筆者が訪れたコンビニの店頭にはなかった。
定番化した爽健美茶は、日本コカ・コーラの製品ポートフォリオでは「金のなる木」となった。ポートフォリオマネジメントの基本は、今後の可能性が未知数の「問題児」のポジションに商品を上市し、金のなる木で稼いだ収益で「スター」に育成することだ。

その原則通り、同社は「からだ巡茶」を同じブレンド茶カテゴリーに投入した。商品名は「体の中からキレイを目指す」を意味するといい、女性を明確にしたターゲット設定は明確。

薬日本堂と協力して製品作りにも力を入れ、CMを大量投入するプロモーションにも注力した。「スター」のポジションに育成する意図が最初から明らかだったのだ。果たして、現状のシェアは不明ながら、コンビニの棚を2フェイスしっかりおさえていることから、しっかり売れ、「スター」に育ったと推測できる。

独占的シェアを持つ爽健美茶と、スターに育ったからだ巡茶の、「日本コカ・コーラ無敵タッグ」に挑む「潤る茶」であるが、勝算はあるのだろうか。チャネル営業に力を入れたと見え、棚を3フェイス確保している。仲間由紀恵のCMも大量投入していることから、認知度は向上しているだろう。
しかし、絶対王者の爽健美茶はどんな挑戦者も許さないということなのか。潤る茶がコンビニ標準価格の147円なのに対し、125円のキャンペーン価格が設定されていた。競合商品のリニューアルの出鼻をくじくメーカの戦略だと考えられる。

この価格戦略は絶妙だ。いくらCMを大量に投入し、認知度を向上させても、最後に手に取らせて買わせなければ意味がない。

「仲間由紀恵」×「潤いの表現」で、AIDMAのAttention(認知)・Interest(関心)ぐらいまでは行くだろう。「ミネラル・ビタミン・コラーゲン」が摂れるといわれれば、飲んでみようかなと思って記憶に残るかもしれない。Desire(欲求)・Memory(記憶)だ。しかし、飲料などの場合、最後の最後に店頭で「やっぱりこっちにしよう!」とAction(購買行動)がすり替わってしまうことも少なくない。

その直前の心変わりを起こさせるには、一番簡単なのは値引きなのだ。しかし、リニューアルしたての潤る茶は値引きでスタートしたくない。痛いところを爽健美茶は突いてきたわけだ。

他の手立てがないわけではない。例えばプレミアム賞品をボトルネックに付けたり、その場で賞品や賞金の当選が分かるインスタントウィン型のシールを本体に貼るなどの方法だ。リニューアル記念とすれば期間限定だし、意味も明確になる。
ブレンド茶ではないが、緑茶系飲料でそれをうまくやっている商品を見つけた。アサヒ飲料の新製品「アサヒ香る緑茶 いぶき」だ。緑茶飲料は、伊藤園「おーいお茶」、サントリー「伊右衛門」、キリンビバレッジ「生茶」の3強がシェア7割を占める。その中に食い込もうというのだ。並大抵のことでは生き残れない。何とか発売直後の初速を付けたい。そこで、前述のインスタントウィン型のシールを貼付け、新発売キャンペーンを展開したのだ。

個人的には「うるる」という名前で、パッケージの「しずくの形」を見ると、ダイキンエアコンの「うるるとさらら」と、そのキャラクターの「ぴちょんくん」を連想してしまう。なので、ダイキンとコラボレーションで「潤る茶ぴちょんくん」のプレミアムを作って、ボトルネックに付ければよかったのではと思ってしまう。13種類の素材にちなんだ13種類のぴちょんくん。筆者なら集めてしまいそうだ。
製品にとっては消費者の審判を受ける場所である店頭。特にコンビニエンスストアはPOS管理され、売れ行き次第では棚のフェイスは減らされ、最終的には置いてもらえなくなるという厳しい世界だ。マーケティング上、ターゲットやポジショニング、そこから熟考した製品などの戦略幾ら考えても、最終的には手に取って買ってもらえなければ意味がない。

マーケティングの要諦は「整合性」だ。ターゲット・ポジショニング・4P(製品・価格・チャネル・プロモーション)。この製品は誰に、どのような特性をアピールし、それはどんなプロモーションを展開して、そのチャネルでどのようにターゲットが手に取って、幾らで買ってもらうのか。その全てがうまく整合していることが求められる。まして、チャレンジャーがリーダーに挑むのであれば、隙がなく、リーダーの裏をかくことも必要だろう。

強大なリーダーに挑む「潤る茶」にエールを送りつつ、その戦い方を今後もウォッチしてみたい。
(この記事は2009年2月26日に初掲載されたものです。)

【記事提供元】
INSIGHT NOW!(インサイトナウ)