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見えてきたWiiの正体[マーケティング戦略・営業戦略]

(コミュニケーション研究所 代表 竹林 篤実)

Wiiの新しい展開が見えてきた。岩田社長自らが日経のインタビューで答えている通り「利用者を笑顔にするものはすべてゲーム」という定義が、Wiiの正体を示している。

■ リビングに入り込むことに成功したWii

この不景気にも関わらず、売れ行きは前年対比2倍のペース。Wiiである。しかも売れている場所は日本ではない。あの、今のところおそらくは世界でも景気が最悪のエリア・北米でだ。もちろんヨーロッパ・日本でも売れ行きは順調。Wiiの販売台数は今や世界中で4000万台を突破している。

さて、1年前に書いた記事では、Wiiがゲーム機でありながら独特のポジションを取っていることを指摘した。子どもだけが夢中になるゲーム機ではなく、お父さん、お母さんが一緒になって楽しめるのがWii。だからこそ置かれる場所も子ども部屋ではなくリビングであり、そのためのプロダクトデザインとなっている。よってゲームのコントローラーも「リモコン」をめざしたのだと。

WiiフィットのCMを少し思い出していただきたい。これを使っているのは誰だったか。メタボに悩むお父さんであり、スリムになりたいお母さんである。もちろん子どもだってWiiは大好きだ。でも、お父さんもお母さんも、ついでにいえばおじいちゃんやおばあちゃんまでも取り込んでしまったのがWiiなのだ。となると、それは当然家族が集う場所、リビングルームに鎮座することになる。

■ 春から始まる『Wiiの間チャンネル』

そして恐らくは満を持してのことだろう、この春から任天堂はWiiへの映像番組配信を始める。事業名『Wiiの間チャンネル』が、すべてを物語っているといえるのではないか。

任天堂の狙いは、お茶の間を『Wiiの間』に替えることにあったのだ。なぜ、このタイミングが満を持してなのか。要因は大きく三つあると思う。

まず1つには、少なくとも日本の家庭(より正確にはWiiのある家庭)なら、ほぼブロードバンドの普及が終わっていることがある。実は任天堂にとってはゲーム機を情報端末として活用するのは、、これが3度目のこと。前の2回はことごとく失敗に終わっていて、いずれもインフラの未整備が原因だった。だから、今回は満を持してなのだ。

さらにはネットを通じて映像を見ることが一般的になってきたこと。その立役者はYouTubeだろう。今やYouTubeユーザーは老若男女を問わない。映像はテレビでしか見れないもの、ではすでにない。ネットにつなげば、いつでも自分の好きな映像を放送時間に左右されずに見ることができる。この感覚が当たり前になりつつある。

そして3つ目には、コンテンツが整ってきていることも大きい。ここに電通をかませていることに、任天堂の本気度を感じる。ネットで動画配信といえば映画やドラマを思い浮かべがちだが、任天堂のコンセプトはまったく違う。

「娯楽や生活情報番組、健康、教育関連など家族が一緒に楽しめるオリジナルコンテンツを主軸にする方針だ(日経産業新聞2008年12月26日付20面)」。本気なのだ。そのためにパートナーとして電通を選んだ。ということは収益モデルもしっかり考えられているわけで、そこでポイントとなるのが『Wiiの間』である。

■ お母さんを狙う『Wiiの間チャンネル』

狙いはお母さんである。「Wiiの利用者は半数以上が女性(前掲紙)」なのだ。言うまでもなく家庭の財布を握っているのが、お母さんである。そのお母さんにアプローチできるメディア、それが『Wiiの間チャンネル』である。メディアとしての価値は非常に高い。

しかも根っこはテレビ=放送ではなく、ネット=通信である。放送と通信の決定的な違いは双方向性。これを活かせば(電通が絡んでいる最大の理由はここだと思うけれど)いろんな仕掛けができる。いずれ地デジになればテレビでもできるだろうことを、Wiiなら使い慣れたリモコンと見慣れた画面で簡単にできてしまう。

そのタイミング地デジへの移行が本格化するギリギリ前のタイミング、それが今年の春なのだ。

■ そして出前注文もWiiで

この春から始まるのは『Wiiの間チャンネル』だけじゃない。Wiiで遊んだり、映像を楽しんだりしていると「じゃあ、今日は出前でもとってお母さんを楽させてあげよう(楽させてちょうだいよ/byお母さん)」となることもあるだろう。

「それならWiiから出前とればいいじゃん」となるのだ。「日本最大の飲食店注文サイト・出前館」を運営する夢の街創造委員会と任天堂が提携し『出前チャンネル』がスタートする。

自宅の住所を指定すれば、注文可能な店舗が一覧で表示され、使い慣れた『リモコン』で注文できる。「商品が届くまでの待ち時間や過去の注文データを表示できる機能も用意(日本経済新聞2008年12月26日付27面)」という。これらはパソコンですでにできることだが、それをお母さんや、おじいさん・おばあさんでも簡単にできるようにするのが『出前チャンネル』なのだろう。

■ 家族みんなとつながるマシン『Wii』

ここまでくるとWiiは、もはや単なるゲーム機とはいえないのではないだろうか。これを岩田社長は「音楽やカメラ機能、健康管理など利用者を笑顔にするものはすべてゲームと定義してみる(日本経済新聞2008年12月26日付11面)」と表現している。

であるなら、Wiiの可能性はさらに広がるだろう。何しろ最先端の半導体技術を使って電力消費を抑え、1日24時間中ずっと通電できる、すなわちネットにつなぎっ放しにすることが可能なマシンがWiiなのだ。

教育、医療、通販なんでもできるマシンがWii。といったら言い過ぎになるのかもしれないが、任天堂の狙いはとんでもなく広く深いのではないだろうか。
(この記事は2009年1月16日に初掲載されたものです。)

【記事提供元】
INSIGHT NOW!(インサイトナウ)