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フィジビリティスタディの必要性

こんにちは、船井総合研究所の大林遥です。

今回は「フィジビリティスタディの必要性」についてお伝えしたいと思います。

弊社への依頼案件として比較的多いものに、“新規事業のフィジビリティスタディ”があります。

これは、新しい市場へ参入する際に、市場の魅力度(市場規模、市場特性、等)と自社の勝ち筋(競合環境、強み弱み、等)を十分に検討し、必要な投資額、キャッシュフロー予測等の財務判断を加えることで、参入に対する可否判断を行なう業務です。

新規事業に関わらずとも、設備投資、IT 等のインフラ投資、人的投資と企業活動には投資がつきものであり、だからという訳では無いと思いますが、都度フィジビリティスタディが行なわれていないケースが少なくないように感じます。
出版業界の企業(A社)からご相談をいただいたケースをご紹介しましょう。

A 社は、今までの出版業界にはない視点で立ち上げた新規のマーケティング事業を立ち上げたばかりという状況でした。事業の発想自体は、A 社の取引先からの関心も高かったため、ビジネスチャンスがあるのではないかと考えられており、相談内容も「マーケティング事業の拡大方法について提案して欲しい」ということでした。

すでに立ち上げている事業であるため、

「市場をどのように定義しているのか」
「その市場規模はどの程度なのか」
「A 社としての勝ち筋をどう捉えているのか」

といった質問を(当然すぐに答が返ってくると思いながら)投げかけたのですが明確な答は無く、

「そもそも既存市場といった概念の無い新しい事業だから、定義づけは難しい」

「取引先からも支持されているし、成功の可能性はある」

といった答が返ってくるのみです。

事業を立ち上げる、あるいは拡大する際には、当然のことながらそこに投資(人、物、金等)が発生するわけです。

“儲かる”可能性を信じてひたすら突き進むようなやり方でも成功している事例はあると思いますので、“悪”と決めつける必要はないですが、このやり方の場合、仮につまずいたときにその原因を明らかにすることが難しい(=適切な対応策を打てない)という問題に必ず陥ってしまいます。

つまり、出来るならば事業のフィジビリティスタディは事前にしておくのがベターだということになります。

では A 社のケースは、なぜ行われていなかったのでしょうか。

投資額が A 社にとって大きな額では無かったということも当然考えられますが、このケースで取り上げたいのは、“市場の魅力度”の把握の弱さです。

なぜならこれは、フィジビリティスタディを行なう際にも前提条件として考える位のベースとなる部分ですし、仮にしっかりとしたフィジビリティスタディをやらないまでも、この“市場の魅力度”に関してはその事業を担当されるメンバーで最低限共有すべきものだと思うからです。

A 社にて、“市場の魅力度”の把握がなおざりにされた理由は、繰り返しにもなりますが以下の2点でした。

(1)「新しい市場を狙ったものだから、市場自体が存在しない」
(2)「一部取引先のニーズに引きずられた、根拠に乏しい成功への過信」

確かに、成熟した自動車市場のように年間の需要が約500万台というような市場規模を算出することは不可能だと思います。しかし、例えば A 社のようなケースで市場を捉える目的は、市場参入~市場拡大といったフェーズにおける“仮説検証”です。

「市場自体が存在しない」と言ってしまった瞬間に、“仮説立案”という仕事は無くなってしまいますが、「こんな問題を抱えている企業に売れるはずだ」というアイディアがあるのであれば、「何故そう考えるのか」という根拠を抽出しなければなりません。

そうすると、「今はどうやって解決しているのか」、「それには費用がかかっているのか」、といった事実の追求まで深堀りせざるを得なくなります。

つまり上記2点に関しては、(2)をベースに考察を深めていくことで、どんな“市場”がありそうだいう“仮説”は出せたはずで、それがあれば市場参入時あるいは拡大時に必要な“検証”が出来るわけです。
さまざまな事業を手がける商社では、数多くの投資案件が出てくるため、フィジビリティスタディで収益性の高い事業を選別することが、企業価値を向上するために不可欠だと言われています。

「そこまで大上段に構えなくても……」というケースでも、「仮説に基づく“市場の魅力度”の把握」までは最低限やっていただくと、事業を成功に導く道筋が見えてくるのではないでしょうか。
(この記事は2008年2月25日に初掲載されたものです。)