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BSCを導入しても失敗する理由とは

こんにちは、船井総合研究所の川原慎也です。

「バランススコアカード(BSC)」とは、皆さんもご存知の通り、戦略を具体的にアクションレベルに落とし込んでいく有効な経営ツールとして世間一般にも広く認知されています。
とは言いながらも、「導入はしてみたものの、導入前に期待していた改善効果が全く見られない」といった程度の失敗事例はまだ良い方で、「BSCのシステムを購入することで導入時の業務負担や展開時の管理負担を減らそうとしたが、かかったのは費用だけで仕組みそのものが有機的にまわっている感じがしない」や「評価制度と連動させることで実効性を上げることを狙ったが、目標達成に対する難易度の高さが逆にモチベーションの低下を招いている」というように、マイナスの側面が目立つ事例も少なくありません。

こういった失敗事例を数多く見ていると、その要因として大きく2つのポイントに整理することができます。ひとつはBSCに対する解釈の誤りであり、もうひとつは現場へ落とし込む際の方法論の誤りです。

まずBSCに対する解釈を誤るケースについて説明しましょう。
まだBSCをいわゆる“箱モノ”と捉えてシステム系のツールと同様に現場に任せて導入してしまえば、ある程度のことは進むだろうという安易な企業がいらっしゃるようです。新しいやり方を取り入れるということは、組織に変化を促すということですから、経営トップおよび幹部クラスの方々には相応の覚悟を持って進めなければなりません。そういう覚悟ができないから、とりあえずBSCという“箱モノ”に頼ろうと考えているのであれば本末転倒と言わざるを得ません。

また、財務目標(財務の視点)を達成するというゴールに向かうわけですから、スタートもそこに置きがちなのですが、これも導入プロセスで様々な誤解を招きます。顧客満足度は当然しっかり上げていかなければならないという前提論にたち、そこに対する議論はなされないまま、財務目標を達成するために管理すべきKPIを設定し、そのKPIを達成するために必要なアクションを設定する。結果、すべて自社都合のアクションが項目として出てきてしまう状況になるのです。
売上目標を達成するために、営業は○○件の見込客を作り、そこから○○件の商談を発生させ、○○件の受注を獲得するといった項目は営業管理上の項目であり、顧客視点からはかなり遠いものと言わざるを得ないといったことからも、正しい考え方の重要性がおわかりいただけるのではないでしょうか。

BSCの考え方の根幹は、自分達が顧客に対して約束すべきことを明確にし、その約束を果たすためにやるべき業務や業務プロセス・組織体制を構築することです。ここがしっかり明確になれば、これらを実践するために必要な人材やスキルを定義することが可能になります。つまり、スタートは財務の視点ではなく顧客の視点ということになります。顧客の視点を考えるにあたり、競合他社と比較した場合に差別化できる要素は何か、顧客にどういった点が評価されているのか、といった部分の議論を徹底的に行なうために、自社都合ではない顧客志向のKPIが設定されるのです。極論になりますが、財務の視点はそのような仕組みを回していくことで結果として得られる位の考え方に立つ方がうまくいくのではないかと思われます。

次に、現場へ落とし込む際の方法論の誤りについて説明しましょう。
BSCは会社全体の戦略マップ作成の後に、各部門ごとのBSC、個人別のBSCと落とし込んでいくことが重要だと言われています。確かにそれは間違いではありません。しかしながら、会社全体のBSCはこうなっているから後は各部門で考えておくように、といった落とし込み方では、せっかくのトップダウンからいきなりボトムアップ的な展開に変わってしまいます。つまりその段階から、全体最適(戦略の実現)を図るために導入した手法であるにも関わらず、部分最適を助長するようなカタチに変貌していくわけです。

戦略上重要なポイントは、複数の部門が連携をとって進めなければならないケースが殆どだと思われます。その前提にたてば、会社全体のBSCを落とし込むためには、まず各部門の部門長あるいはキーマンの方を集めたクロスファンクショナルなメンバーによる業務への落とし込みの明確化が必要になります。

BSC導入は、決してシステムによって容易に導入できるものでもなく、評価制度に活用するためのものではないことを理解するとともに、企業に対して多かれ少なかれ変革を要求するものだという認識のもとに推進することが必要ではないでしょうか。

川原 慎也
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/攻めるPDCAマネジメント・顧客満足度アップ
外資系自動車メーカーにて営業、マーケティングなどを経験したのち、1998年船井総合研究所に入社。年商1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業態を問わず幅広くコンサルティングを行っている。 PDCAを切り口に現場の行動に変化をもたらし、企業を新たな成長のステージへと導くコンサルティングが近年高い評価を獲得。