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イノベーションを意識した経営のスタートは“覚悟の経営”

IT技術を利用したり、ゼロベース思考で再構築・再構成したビジネスが破壊的とも言われる成果を産みだし、既存勢力を食い尽しだすような姿が多くの業界でみられるようになってきました。それらのビジネスは競合に対して圧倒的に優位性あるビジネスであり、結果として社会と暮らしを大きく変化させていきます。いつの世もお客様や社会、取引先に貢献し喜ばせることがビジネス、収益獲得の起点であることに変わりはありません。しかし自動車の自動運転が始まれば、自動車教習所も自動車保険も大きく機能と役割を変えないといけなくなると思われます。

マイナンバー制度がフル活用される時代となれば、簡単な申請業務、身元確認などはよりシンプルでスピーディなものにとって変わり代行業者的要素で稼いでいる士業、社員・職員の職も消滅していくかもしれません。AI(人工知能)の活用と音声認識の技術が活用されるようになると、単純なコールセンター業務、お問い合わせ・相談業務に人間が不要になる確率が高まっていくと思われます。経験と勘が重視されてきた農業や漁業もより気象条件や温度にあわせて生産性を高めるシステムが普及していくことと思われます。

このように大きな変化が到来している時代なのですから、ピンチの裏には大きなチャンスがあります。今こそ経営者および幹部は過去の成功体験やしがらみでガンジガラメとなった発想から自らを解き放ち、自分たちの会社こそが次の時代に業界や社会を変革していくイノベーターとなるという発想が重要です。言い換えれば戦い方のルールが変わろうとしているなら、自分たちがルールや基準、標準品質を作りだし主導権を獲得しビジネスの主導権をとるという姿勢をしっかりと固めるということです。

私はよく企業経営者や幹部に尋ねます。「今、貴方はビジネスにおいてファイティングポーズをとっているとハッキリと社員に言えますか?」と。経営者や幹部はそれを日常意識しているか否かを問わず常に社員から見られているというのが現実です。日本で働く人の多くは崩れてきた部分はあるとはいえ、春季の一括採用・日本型終身雇用が雇用のベースだということを理解しています。労働者不足、年金の財源不足の影響で定年や65歳までの雇用義務もさらに70歳程度まで再延長される可能性もあり、卒業して45年~50年間働かねばならないという現実と向き合って新入社員は社会に入ってきているのです。

それは45年~50年先の未来を明るく感じることができる職種、環境、キャリアプランとはどういうものかを考えて進路を決めているということと同義です。対して社会は5年先どころか3年先さえ読めないと言われるほど急激な変化の時代を迎えています。ですから今、商品が売れた・売れないで一喜一憂する経営のあり方よりも、時代が変わったなら変わったなりに顧客のニーズ・ウォンツを理解し自社らしい魅力ある商品・サービスを産みだす意識と体制づくりに力をいれている経営が選ばれることになります。

また、給料を稼げればよい、頂ければよいという話ではなく将来的に給料を自分の力で上げていけるチャンスがある、平等ではなく公正・公平に評価される仕組みがあるという企業が選ばれ、さらに仕事の報酬として給料を頂けるというというだけではなく楽しく仕事ができ、さらに色々な人との出会いがありその人たちからの刺激と応援・支援を受けることができる環境があるということが企業選択の重要ポイントとなるのです。また会社自身が常に自分たちの個性を大切にしながら、社会に対して新しい提案をする姿勢を持ち、変化を前向きに受け止めチャレンジする姿勢を持ち得ているかどうかが一番の社員の関心事になるということです。

ですから厳しい環境とはいえ、その環境を苦と思ったり運が悪いのだと諦めているようなそぶりを見せないこと、ファイティングポーズを経営トップや幹部がとっていることは何より重要なことなのです。経営においてイノベーション=変革はいつの時代も大切です。変革に挑戦し進化したからこそ現在の豊かな社会、便利な社会が形づくられているのです。イノベーションは組織を変えること、仕事の定義を変えること、中心事業を変えること、主力商品を変えていくこと、チャネルを変えていくこと、価格を変えること、給与や評価制度を変えること、物流を変えるコト、事業所や倉庫の場所を変えること、営業体制を変えること、今使っているシステムを変えること、今やっている販促や広告を変えること、それらができないことなのかと真剣に考えるということがスタートになります。

既存の体制を温存して積み上げ型で数字を組み立てながら変化に挑戦しようというのは得策ではありませんし可笑しな話になることが多いと思います。そしてその実行・実現には不安が付きまとうのも普通です。なぜなら人間は慣れ親しんだモノやコトを辞めることが得意な生き物ではないからです。頭を365日24時間フル回転させて変化に挑戦する人よりも毎日同じ時間に起き、同じ時間に同じことを行い、同じ道を歩いて会社や学校に行って帰るという習慣が普通と考える人のほうが多いのが現実だからです。そして、それが当たり前で平和だし幸せなのだと思いたいという気持ちをもっている人も少なくないのです。

社会の変化、生活者のライフスタイルの変化が急激に変わる今、振り返ってみてみれば、5年前、10年前の日本では新聞や雑誌を読んで電車にのっている人が多かった風景がスマホでゲームを楽しんでいたり何かを読んでいる人が多くなりました。旅行や仕事で知らない場所に行くときに地図や電話帳で場所を確認している人を見ることもめっきりと見なくなりスマホやタブレットを眺めている風景が当たり前になりました。日本はあまり変わらないのが問題なのですが欧米の人気企業、時価総額の大きな企業は10年前と今では違った名前が並ぶようになっています。変われない日本、変われない企業、変わらない仕事ぶりではとても立ちいかないのが現実なのだと思います。

ところが、10年前とほとんどかわらない商品企画と体制、営業手法と営業マンの数の会社は決して少なくはありません。そして厳しい厳しいと言っているわけです。10年前と仕事ぶり、働きかた、会議の仕方、出荷の仕方、営業資料、ホームページ、カタログ、評価制度が同じ会社は相当問題だし、危機感を持たないといけないという現実に目を背けてはならないのです。変わろうといいながらも変わりたくない本音が行動を鈍らせているとも言えましょう。

ビジネスに対する理念や、伝統を守るという視点を私は重視しています。しかし時代に合わせて悪しき部分、時代に合わない部分はあるべき姿、ありたい姿に変えていくことは経営トップ、幹部の重要な責務です。それは現場社員の頑張りややる気だけでは変えられないことなのです。時代についていけない、時代に取り残される企業は社員やお客様を幸せにすることはできません。時代にあわせた経営、時代をリードする経営に挑戦する会社はお客様とともに働く社員の心もときめかせます。変化が激しい時代だからこそ先行すれば中小企業にも飛躍のチャンスは大いにあります。

変化をピンチととらえるかチャンスと捉えるかはイノベーションを意識した経営に取り組む企業創りを先導する経営者の立ち位置と考え方で大方が決まります。いつの時代も経営者や幹部がファイティングポーズを取り、未来を見据えた構想を提示し社員を一歩も二歩もリードすることが企業成長の鍵なのだと思います。それでも変わることがなければ外からの力を利用したり変われないもの通しが変わらざるを得ない環境をもとめて合併したり、分社したりプロ経営者を招いたりしなければならないのでしょう。イノベーションへの挑戦は“覚悟の経営”に取り組むという前提条件が必要だと言えるのです。

岡 聡
株式会社船井総合研究所 執行役員 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/流通業(メーカー・卸・小売)向け
入社以来、アパレルメーカーでの企画・製造・小売の総合的な知識に船井流マーケティングをドッキングさせ、ドラッグストア、ホームセンター、商業施設・商店街、食品スーパーなどの小売業の活性化、メーカー戦略、ブランド開発、商品開発、チャネル開発、新業態開発、営業部隊活性化、本社戦略・営業システム開発、マーケティング教育などをトータルに企画・コーディネートし、企業の経営企画をサポートしています。(経済産業大臣登録 中小企業診断士。日本商工会議所・全国商工会連合会 1級販売士。)