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あなたに課された数値目標は本当に“絵に描いた餅”? 予算を達成できないマネジャーが陥りがちな罠

■ 「予算(目標数値)なんて達成できないよ」マネジャークラスが毎年抱える悩み

「いや、参りましたよ。経営陣から来期予算の通達があったんですが、とてもじゃないけど達成できる気がしません。ホント、“絵に描いた餅”で、上も達成できるなんて思ってない気がするんですよ。そもそも、数字以前に解決しなきゃいけない課題が山積みの状況だっていうのに、上はどう考えているんでしょうね」

多くの企業が年度末を迎える3月、マネジャークラスのこうした嘆きが出てくるのは毎年恒例のようにも思われます。とは言いながらも、次の年度末にしっかりと目標を達成するマネジャーが少数ながら確実にいるのも事実です。スタートは全く同じで、同様に「とても届く気がしない」という数字に向かっているにもかかわらず、ゴール地点で大きな差がついてしまうのはなぜなのでしょうか。

よく、「担当している市場や取引先の有利不利の点で、(達成したか、しないかの)差がついているんじゃないですか?」といった指摘を受けることがありますが、実際はその点はあまり関係ありません。

今回は、目標を達成できるマネジャーの行動や考え方を整理しながら、ベンチマークすべき点を見出してみたいと思います。

■ 南アフリカW杯における岡田監督の決断から学ぶ“中期的課題”と“短期的課題”の違い

まず、目標を達成できているマネジャーたちは、“中期的課題”と“短期的課題”を混同していないという特徴があります。

これは、考え方として非常に重要なポイントでもあり、私自身はしばしばサッカー日本代表の南アフリカW杯における活躍を例に取り上げて説明しています。

南アフリカW杯に臨む日本代表に関しては、新聞、TVなどのマスコミ各社の報道もあり、多くの国民が「決定力不足が最大の課題」という認識をもっていました。その課題認識自体が間違っていたとは思いませんが、「まもなくW杯が開催される」段階で取り上げるべき課題としては適切ではなかったでしょう。どちらかというと「決定力不足」は、“中期的課題”と捉えて、若手選手の登用方法やジュニアの育成システム構築といった方策に落とすべき問題なのです。

W杯直前に“短期的課題”として真剣に考えるべきことは、「現有戦力でいかにして勝つか」という視点です。当時の岡田監督は、「点を取られない」ことを最大の課題として掲げ、そのためにエースであっても控えにまわってもらうという決断を下し、予想外の活躍に導きました。

これは、ビジネスにもそのまま応用できる考え方です。

多くの企業には、「営業人員のスキル不足」、「顧客データベースなどのITインフラが整っていない」など、様々な課題があるでしょう。ただし、それらは「確かに重要だけれども、すぐには成果が出ない」ものが多いと思います。サッカー日本代表で言うところの「決定力不足」に類するものです。

目標を達成できないマネジャーは、どうしてもこれらの“中期的課題”にばかり意識が向いてしまい、「今の状況では達成が難しい」というスタンスになってしまいがちです。しかし、目標を達成するマネジャーは、「それはそれ」として、「今の状況でも達成させるために自らが工夫すべきところはどこか」を徹底的に考え抜いています。

■ 目標数値を達成するマネジャーが行う3つのステップ

「今の状況でも達成させるために…」と考えるマネジャーは、目標数値に対して現在がどういう状況なのかを詳細に把握しようとします。

その第1ステップとして、“固い数値”(=すでに“確定”といっても大丈夫なレベルの数値)を見極めます。例えば、すでに契約が決まっていて売上計上月まで読める数値、あるいは既存顧客の中で来期もある程度の取引が予測できる数値、といったものです。

“固い数値”を確定させると、目標に対して不足する数値が明確になります。もしかすると、“不足数値”は途方もないものかも知れませんが、第2ステップではそれを埋めるために「どんな仕掛けをして、どの位の数値を上げるのか」を列挙していきます。「既存顧客に対してのさらなる仕掛け」、「新規市場の開拓とそこに向けた仕掛け」、「今期仕掛けたイベントなどの効果の振り返りと来期のイベント計画」など、“不足数値”を全て補う仕掛けを挙げることがポイントです。

最後の第3ステップでは、“不足数値”を埋めるための仕掛けにどの程度のリソースをかける必要があるかを検討します。この段階では、部署のメンバーも巻き込んで仕掛けの難易度も議論しながら、コストはもちろんのこと、人員や期間まで明確にするのです。

最終的なアウトプットとしては、「“固い数値”をいかに効率的に上げていくか」と「“不足数値”の仕掛けにいかに時間をかけるか」の2つが現場で最も重要になるのです。

■ “勝ち”の定義を細かく設定して現場の士気を上げよう

さて、本当の意味で成果を上げるためには、マネジャーとして計画の実行度合いを管理していかなければなりません。管理というと、「計画に対して実績が出ている」あるいは「足りない」といったものをイメージしがちですが、それは達成に向けた管理の一部でしかありません。

“固い数値”の管理であれば、ある程度見えているものなので、数値の過不足をみながら次のアクションを考えていけば良いでしょう。しかし“不足数値”を管理する場合は、実績が上がるまでに期間を要するものが多いので、実績が出るタイミングに状況を把握しても対応策が取れないという状況に陥ってしまいます。

ということは、実績が上がったときを“勝ち”とするではなく、実績が上がるまでのプロセスで“勝ち”の定義をつくって管理しなければなりません。

例えば、営業の新規開拓では、「担当者が時間をつくって話をしてくれた」、「お互いのプライベート情報なども共有して人間関係が作れた」というような受注までの重要なステップがあります。まだ実績が上がる段階ではないですが、マネジャーとして「お、そこまで進んだの、凄いじゃないか!」と褒めながら、周囲のメンバーともそれを“勝ち”として共有することも大切です。

福岡県北九州市に、18期連続で増収増益を達成し、日本で一番視察者が訪れると言われる「ハローデイ」という食品スーパーがあります。自らも“アミューズメントフードホール”と名づけるように、「お客さまに楽しんでもらえる売場」を実践できているからこそ多くの方が視察に来られているのでしょう。ですが、それ以上に注目されるべきなのが、「なぜその“売場づくり”が日々できているのか」という部分です。

ハローデイの社長あるいは幹部は、(多くの企業がやっていることですが)店舗を巡回します。ただし、その内容はおそらく他の企業の巡回とは大きく異なっています。なんとハローデイでは、「楽しい売場づくり」を実現しているところを見つけ、その売場やその担当者を賞賛しているのです。

店舗巡回と聞いて、多くの皆さんが想像するのは、「売場の工夫が足りない」、「主力商品がわかりづらい」、「清掃状況が悪い」といった幹部からの指摘であり、おそらく「早く帰ってくれないかな」と感じている方も少なくないでしょう。

一方のハローデイの店舗スタッフの皆さんは、おそらく社長が巡回に来られるのを楽しみにしながら、日々工夫をしています。つまり、「楽しい売場を作ること」がハローデイでは“勝ち”の定義として共有されているのです。

■ 目標を達成するマネジャーに近づくヒント

今回、目標達成するマネジャーのポイントとして3つ挙げましたが、もっとも重要なのは1つ目の「正しい課題認識」です。

“中期的課題”と“短期的課題”を混同せずに切り分けて考えることができるようになれば、「現在の環境、現在の戦力でいかに来期を戦うのか」にフォーカスすべきだと気づけるのではないでしょうか。

目標が達成できないと悩んでいるマネジャーの方々は、まず今回ご紹介したような目標を達成するマネジャーの「スタンス」を見習うことからスタートしてみてはいかがでしょうか。
(出典:ダイヤモンド・オンライン)

川原 慎也
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/攻めるPDCAマネジメント・顧客満足度アップ
外資系自動車メーカーにて営業、マーケティングなどを経験したのち、1998年船井総合研究所に入社。年商1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業態を問わず幅広くコンサルティングを行っている。 PDCAを切り口に現場の行動に変化をもたらし、企業を新たな成長のステージへと導くコンサルティングが近年高い評価を獲得。