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実務スタッフとのコミュニケーション

今回は、実務スタッフとのコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

コンサルタントのミッションは、クライアントの活動に影響を与えて、求める成果に向けて先方を動かし結果を出していただくこととなりますが、そのための手段としてコミュニケーションのとり方は非常に重要となります。

その種類は大きく二つで、一つは、トップ層に対してこれから進めていく方向性に合意いただくためのコミュニケーション、もう一つは、合意した方向性を煮詰め、現場の実務レベルに落として実行に移すためのコミュニケーションです。そして、これらはコンサルタントだからということではなく、読者の皆様も日頃腐心されていることだと思います。

その中で前者については、読者の皆様のシチュエーションによって頻度や質が異なるケースがあると思いますが、後者については、組織に属する上でどのようなシチュエーションにおいても、同僚と、部下と、上司と、という形で普遍日常的に必要となるコミュニケーションといえます。

よってここでは、皆様の日常的な活動におけるご参考に、当方が普段クライアント実務スタッフとのコミュニケーションにおいてどのようなことに留意しているかについて言及してみたいと思います。
コンサルタントのコミュニケーションというと、基本はアウトプット主義なのでアウトプットとそのプレゼンテーションが全てと思われがちですが、決してそれだけではありません。

なぜかというと、前述の通りコンサルタントのミッションはクライアントにおける成果に向けて先方に動いていただくことですが、実行を担う現場の人の行動は、どれだけその提言が正しかろうと、単発のコミュニケーションだけではおおよそ変らない、つまりは動かないからです。

人の行動が変わるということは、彼らの主体的な行動原理が変わることを意味します。行動原理が変わるとはつまり、やるべきことに行動の多くを割き、逆にやるべきでない行動に費やしていた労力をやるべき行動に振り向けるということです。

しかし彼らの行動原理は、生い立ちや業務上様々な制約条件の中での積み重ねで醸成されてきたもので、右から左に簡単に変わるものではありません。それゆえ、単発のコミュニケーションレベルでは一時変わったように見えても、過去の長い歴史で醸成された行動原理の引力の方が強いため、しばらくすると元に戻ってしまうことが多いのです。

このため、最後のアウトプットプレゼンテーションはおさらいであって、その事前のコミュニケーションプロセスで過去から醸成された行動原理を漸進的に変えていくという活動が必要だと考えています。

そこで当方は、アウトプットを生成するプロセスとして週次レベルでのセッション形式をとり、情報収集の傍ら、実際には行動原理を変えるためのコミュニケーションを行っています。

そのコミュニケーションのポイントは、納得です。ちなみにここでいう納得とは、理解とは違います。頭で理解はしても、納得しなければ行動原理は変わりません。
ではどのように相手を納得させるか。

これは私見ですが、人は、そうは人の話を聞きたくないものだと思っています。ですから、相手を納得させるにはまず、こちらの話を聞くスタンスを相手に持たせる必要があります。

ここで、どれだけこちらの言い分が正しかろうと、結論ありきで頭ごなしのコミュニケーションでは、相手に話を聞くスタンスを持たせることはできません。逆に意固地に拒絶するスタンスを持たれるリスクの方がずっと大きいでしょう。

人に話を聞かせるための一番の方法は、こちらが聞き上手になることです。こちらの意見を出す前に、とにかく論点のみを提示して全員の意見を聞きまわります。

セッション相手のグループの中には大概、否定をおそれて発言をしたがらない方がいらっしゃるので、彼らに対しては、場合によっては失礼なくらいフランクにあたりながら発言を引き出して、必ずどこかに合意する形で恐怖感を取り除きます。

強行に提言への否定論を呈するような方も、大体はその根源には恐怖感があるパターンなので、彼らも含め全員に対して同じアプローチで恐怖感を和らげて場全体の発言を活性化させます。

全員の意見を聞きまわった上で、総意をサマリしてこちらも先方の意見を理解したことを表明し、次の論点に移る、ということを繰り返します。この流れの中で、こちらは常に真摯に相手の話を聞いていて、それをきちんと理解しているというスタンスと能力を表明することで、相手にもこちらの話を聞こうというスタンスが形成されます。

このようにして相手方にこちらを受け入れるスタンスができてはじめて、こちらの提言も一理ある、自分が間違えていると考えた方がいいのかもしれない、という納得が得られ、行動を変えてみよう、という行動原理変更のインセンティブが働くのです。

あとは実際の実行の保全として、制約条件のコントロールや方向性の明示、アクションの定義などのコンテンツ論に入ることができます。

結論として、現場を動かすコミュニケーションとしては、提言のコンテンツにおける正当性はもちろん、提言を得心して受け入れさせる、ある意味まどろっこしい、場合によってはこちらが根負けしそうになるほどの事前のコミュニケーションが重要だと思っています。
いかがでしょうか。

こちらの提言が明快であるほど、相手全員の意見に懇切丁寧に耳を傾けるのは苦痛かもしれませんが、最初に根気強く上記の過程を踏まないと、結果的に思うように動かず成果が出ないことが多く、また、だからといって後になってコミュニケーションを修復しようとしても、当初よりもより強固な障壁が形成されてしまうため、難易度が増してしまいます。

以上、実務上身近な人々とのコミュニケーションに悩まれている際には、それを見直す一助となれれば幸いです。
(この記事は2009年2月16日に初掲載されたものです。)