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組織のダイナミズムを変革する~些細な点に気づくことの重要性~

こんにちは、船井総合研究所の濱野雄介です。今回は「組織のダイナミズム」についてお話します。

先日、クライアントの役員から、「組織のダイナミズムを意識してコンサルティングを進めて欲しい」というリクエストを受けました。今ひとつ動きが悪く、スピード感に欠ける組織活動に対して不満を感じていたのだと思います。ここではとりあえず、“組織のダイナミズム”を、成果を出すための組織活動そのもの、またはその実行スピードや原動力と定義しておきましょう。

成功確率が高いと思われる戦略を打ち出し、現場で実行可能なレベルにまで落とし込んだアクションを詳細定義しても組織がなかなか動かないといった現象は、皆様も少なからずご経験があるかと思います。また、一般的に、優秀なマネージャーほど結果管理ではなく結果を出すまでに至る部分でのプロセス管理が必要だと言いますが、プロセスを管理しても成果が出ないといった壁にぶつかったこともあるのではないでしょうか。

このような壁をブレークスルーするためには、現場のマネジメントレベルにおいてちょっとした工夫が必要です。その工夫というのは個人のアクションのステイタスを管理するためのツールといった話ではありません。具体例でお話しましょう。

本部社員、拠点長、営業マンといった3階層で構成されている組織の場合、本部社員が拠点長をマネジメントし、拠点長が営業マンをマネジメントするといった、それぞれが一階層下の組織を管理する流れが自然ですよね。ところが、企業全体が大きく方向転換すべき変革フェーズにおいては、この一般的なマネジメントスタイルを継続しても全く現場が動かないケースをしばしば見かけます。これは、戦略を変えても、それと同時にマネジメントスタイルも合わせて変えければ本当の意味での変革にはつながりにくいということを示しています。

話は変わりますが、「ホーソン工場実験(1924年から1927年にかけてシカゴにあるウエスタン・エレクトリック社の工場で行われた実験)」をご存知でしょうか。経営学部ご出身の方なら皆さんご存知かと思いますが、この実験は、照明実験、リレー組み立て実験、面接実験、バンク配線作業実験などのパーツに分けて行われました。

ここで皆様にお聞きします。照明実験において、作業グループをAグループとBグループの2つに分け、Aグループは照明を薄暗い状態(悪条件)で一定に保ち、Bグループは作業しやすい状態の明るさに照度を上げて(好条件)生産性を比較した場合、AグループとBグループの生産性のどちらが上がったと思いますか?

当然、好条件で作業をしたBグループの生産性が上がったと思う方も多いと思いますが、実は予測に反して、悪条件で作業を行ったAグループの生産性も同時に上がってしまったのです。なぜか?

理由は、アタリマエ過ぎるほど単純です。モチベーションの問題ですが、多くの社員の中から自分達だけが選ばれたという参加者の自覚とプライド、そして自分達は監視されているといった意識が大きく作用し、結果、AグループとBグループの双方の生産性が向上してしまったのです。

この実験結果は、上記で説明した、本部社員、拠点長、営業マンといった3階層で構成されている組織のマネジメントに活用できます。
例えば、本部社員が拠点長を経由せずダイレクトで現場第一線で働いている営業マンに対して監視の目を光らせたらどうなるでしょうか? (もちろん拠点長によるマネジメントも残しつつ)

現場の営業マンは、「今までとは異なる管理者が自分達を見ている」と考え、それに伴い、なぜか業績が向上するといった現象が部分的にでも起きるはずです。

実際、我々コンサルタントが、好業績の営業マンと一般的な営業マンの行動レベルの違いを洗い出すための張り付き調査を一週間行っただけで、双方の営業マンの業績が同時に上がってしまったこともありました。

このように、現場におけるマネジメントレベルでの細かい工夫やアイデアの積み重ね次第で“組織のダイナミズム”を刺激できる場面もあるのではないでしょうか。視野を広げ過ぎて、総花的な打ち手を打っても全く効果がない状況下において、このような些細な点に気付くか否かで“組織のダイナミズム”に大きな開きが出てきてしまうものです。

優秀な経営層の方ほど、この辺の嗅覚が強く、突然「今回のプロジェクトのチャンピオンは僕がやろうか」などと言ったりするのも事実です。

「成果は“組織のダイナミズム”に依存する」という前提で、皆様も今までとは異なったマネジメントスタイルを試みてはいかがでしょうか。

濱野 雄介
船井総合研究所 プロジェクトマネージャー