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日本のモノ作りに学ぶ人材育成

「町工場」という雰囲気の社員数30名程度の小さな会社の話です。派手な特許技術や、どこにも負けないと言えるほどの超技術を持っている訳でもないのに、確実に利益を上げています。価格競争になりやすい大量生産品は取り扱わないことなど、ビジネスモデル自体もその理由のひとつですが、それを支える人材の考え方にポイントがあるようです。

その会社は、その地域の国立大学から毎年1名づつ採用をしています。学歴が全てではないとは言え、高学歴な人を確実に採用できるのは凄いことです。しかも、社員が辞めないのです。その理由は何か…その会社で働けば、堅実な技術を習得できると思えるからです。この会社の職種は、「設計」、「組立」、「素材加工(旋盤やドリル)」の3つに分類されています。勝手な先入観かも知れませんが、「設計」が上流で、「旋盤やドリル」が下流というイメージはあります。

その会社の社長の基本には、良い設計をやるためには、組立のことがわかっていないといけないし、組立をやるためには、旋盤やドリルで素材加工ができないといけないと言う考え方を持っています。そこには、上流も下流もないという考え方にあります。新人に対して、研修として色々な工程に関わらせる会社はたくさんありますが、そのほとんどが、あくまでも研修レベルで体験させる程度に過ぎず、その道のプロ(職人)になるのとは程遠いレベルの会社がほとんどです。

しかし、この会社は、その道の一人前の職人のレベルになるまでやらせるのです。例えば、ドリルでの穴あけがあります。傍目から見れば、鋼板を固定してドリルレバーを下げるだけの単純作業ですが、素材によって微妙な手加減で、僅かな違いが生まれ、その違いが品質に決定的な影響を与えるようです。センスの良い社員でも、3ヶ月程度かかるそうです。

CADの使い方を教えれば、すぐに通用する設計者は育成できるのですが、こんな育成をしていたら、育成時間はかかります。当然、失敗をすれば素材のロスも出ます。それでも会社は儲かっているのです。それは、そのしっかりとした技術力が、クライアントに高く評価されているからです。

短期的に見れば、すぐに戦力化できるように、やり方(HowTo)を教えていく育成方法が正しいのでしょう。しかし、時間をかけて技術者を育成するという会社も必要ですし、すぐに一人前になれなくてもしっかり基礎力を付けたいと考える若い人材がいることを素晴らしいことだと思います。大袈裟かも知れませんが、こういう積み重ねがあってこそ日本は強い経済大国になったのではないかと思います。

山田 公一
株式会社船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント
大手化粧品会社で、11年にわたり営業、販売スタッフ及び小売店指導に従事し、2001年 船井総合研究所に入社以来、「利益=社員数×生産性」の方程式を信条として、やりがい の持てる人事(評価・賃金)制度の構築及び運用の支援、管理職研修をおこなっている。 著書に「やさしくわかるお店の数字」(日本実業出版社)「パートアルバイト採用戦力化・定着マニュアル」(同文館出版)