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成果主義の人事制度だけでは、人は動かない

「デキる支社長とは、低い目標を本部に設定させて、その目標を確実に達成させる人」

前職時代、私は同僚たちと一緒になって、上司である支社長をそのように評していました。支社の目標が低ければ、その所属員である私たちの目標も低くなるので、達成する確率は高まり、高い評価を得やすくなるからです。

人事制度とは、評価や給料などの会社と社員の双方にとって大切なルールを明確にして制度化したものです。これがしっかり示されていないと、社員は不安になりますし、それぞれに勝手な要求をしてきますので、しっかりと明示しておく必要があります。
しかし、人事制度として明確になった瞬間に、制度だけが本来の目的とは違う方向に一人歩きをはじめ、会社の成長を阻害してしまうことがあるのです。

その一つに、「成果主義の人事制度」があります。

ここで言う「成果主義の人事制度」とは、業績(売上や利益)の目標を設定して、その達成率などの数字を評価して、その結果をダイレクトに、賞与や昇給、場合によって地位や役職に反映させていくやり方です。
数字を使ったほうが、評価から恣意的な部分が排除され、最も公平であり、客観的で社員の納得を得やすいと考える方は少なくありません。また数字だけの評価であれば評価の手間が少なく簡単です。ですから多くの会社で定量的な業績評価のウェイトを高めようという話になるのです。

成果主義の要素を高めて
・社員に業績(売上・利益)に対する意識を高めて欲しい。
・結果である業績に対する責任を持って欲しい。
・業績に応じて給料・賞与を配分することにより、人件費を適正化したい。
・・・といった経営側の思いがあります。
働く社員側も、頑張って成果を上げれば、給料や賞与で報われるのでモチベーションアップの観点でも効果はあります。

形式的な評価制度がなくても、ほとんどの会社では、能力があって業績を上げた人が、高評価を得て、それ相応の役職やステータスを得て、それ相応の給料を得ていますので、既に何らかの形で成果主義は導入されていると言えるのです。
しかし、形式化された人事制度として「定量化した成果」を出してしまうと、なぜだか会社が悪い方向に傾くことがあるのです。

1つ目は、業績が悪くなったときに、逆効果になりやすいという問題です。
業績が悪くなると賞与や昇給が減っていきます。理性の上では当たり前のことなのですが、人は良い時は自分の努力のおかげで、悪くなってくると環境のせいにする傾向にあるようです。
経営陣の思いとしては、そのときに「なにくそ!」と発奮して、業績回復してくれることを期待するのですが、その状態がしばらく続くと、社員は諦めモードになって、不満ばかりが大きくなっていきます。最悪の場合は、離職してもっといい会社に転職してしまいます
成果主義の人事制度で、人件費を低く抑えることはできますが、せっかく育てた逸材は流出し、残った社員のモチベーションが停滞しまえば、業績回復はますます難しくなっていきます。

2つ目は、成果主義の評価が邪魔して組織の柔軟性を失うことです。
会社が成長すると、地域別や顧客別、商品別など、部門を分けていくことになります。分割するとどうしても、市場規模や競合状況、社内事情も含めて、業績を上げやすい部門とそうでない部門がでてきます。
会社全体のことを考えるならば、能力のある人に、新規性のある部門や難易度の高い部門を担当させるべきなのですが、成果主義の評価があるために、それができないという本末転倒なことがおこります。(いくら例外的に数字以外も考慮すると言ったところで、数字の持つ魔力には勝てないのです。)
そして最後は、冒頭に書いたように、業績を上げることより、評価を上げることが第一目的になってしまうのです。

だからと言って、成果主義を完全否定している訳ではありません。頑張って成果を上げても全く報われないなどの悪平等は避けるべきです。
ただ定量化すれば、客観的で、公平で、絶対に正しい評価ができるという考え方が問題なのです。結果数字だけに偏った成果主義ではなく、プロセスを重視した成果主義が大切なのです。

山田 公一
株式会社船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント
大手化粧品会社で、11年にわたり営業、販売スタッフ及び小売店指導に従事し、2001年 船井総合研究所に入社以来、「利益=社員数×生産性」の方程式を信条として、やりがい の持てる人事(評価・賃金)制度の構築及び運用の支援、管理職研修をおこなっている。 著書に「やさしくわかるお店の数字」(日本実業出版社)「パートアルバイト採用戦力化・定着マニュアル」(同文館出版)