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増加するうつ病社員のメンタルヘルス対策には、スポーツ選手も実践する“フロー理論”活用せよ!

■ 20~30代社員に激増する“うつ病”。対策を講じる企業は86.5%に

「最近、また“うつ病”になる社員は増えているんでしょうか?」

「わが社では“うつ病”で会社に来られなくなる社員が増えてきたので、メンタルヘルス対策を強化しようという方針が出ているんですよ。
他社がどんな取り組みをしているのか色々教えて下さい」

数年前から“うつ病”を患う社員の増加は顕著になっていましたが、
どういうわけか“ゆとり世代”の入社を境に、一層多くなったのがこうした相談内容です。

ただし、労務行政研究所が調査した『企業におけるメンタルヘルスの実態と対策』(2010年)によると、
特に“ゆとり世代”に限った話ではないことがわかります。

この調査は、主に上場企業を対象としており、回答のあった252社の分析結果をまとめたものですが、
「メンタルヘルス不調者が増加している」と答えた企業44.4%のうち、
「特に増加が目立つ年代層は?」との問いには、20代:47.3%、30代:48.2%、40代:21.8%、年代に関係なく増加23.6%という結果になりました。
つまり、ゆとり世代だけでなく、20~30代の若い層を中心に増えているのが実態のようです。

こういった問題意識の高まりから、対応策を実施している企業は、86.5%にのぼっています。

対応策の内容と実施率をみると、
「心の健康対策を目的とするカウンセリング制度」:70.2%、
「電話やEメールによる相談窓口設置」:67.0%、
「管理職に対するメンタルヘルス教育」:59.6%、
「一般職に対するメンタルヘルス教育」:44.5%といったものが上位に挙がっています。

特に前回(2008年)調査との比較において、「一般職に対するメンタルヘルス教育」を実施している企業が伸びている(29.3%→44.5%)ことからも、
いわゆる予防的観点の対策を施さなければ抜本的な解決には至らないという現状をうかがい知ることができます。

■ 「結果」にとらわれず「パフォーマンス」を上げる“フロー“という心の保ち方

メンタルヘルス対応の相談を受けながら、以前、興味があって参加した辻秀一先生のセミナーを思い出しました。
辻先生から教わった“フロー”と言う概念は、企業のメンタルヘルス対策にも大いに活用できるものだと思ったからです。

辻先生は、スポーツドクターを標榜されており、この“フロー”をベースにした「辻メソッド」という理論を確立してスポーツ界で活躍されていましたが、
現在は、ビジネス界、教育界、音楽界とフィールドをどんどん拡げていらっしゃいます。

“フロー”をわかりやすく定義すると、「揺らがず捉われず気分の良い心の状態」ということになります。
この状態をキープすることで、高いパフォーマンスを発揮できるという考え方から、スポーツ界で取り入れられてきました。

どんなスポーツであっても結果が求められますが、この結果に捉われてしまうあまりに本来持っている力を発揮できなかった、
つまり結果を出せなかったというのはよく聞く話です。皆さんも思い当たる経験があるのではないでしょうか。

ひとつ例を挙げて説明しましょう。

ゴルフをする方なら1度は、「このパットを決めればバーディー」といった状況に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
しかも距離はカップまで約1メートルと絶好のチャンスです。

「バーディーパットを“決める”」と結果を求めれば求めるほど、集中力は逆に散漫になり、
体の余計なところに力が入り、結局パットは外れてしまった。
そんな経験をしたことのある方は結構いらっしゃると思います。

しかし、“フロー”をキープする訓練のできている人は、結果に捉われず、雑念のない心の状態をつくり、
「普段どおり(のパフォーマンスを発揮して)1メートルのパットを“打つ”」ことができます。

「“決める”ではなくて“打つ”」

この“フロー”をキープして普段どおりのパフォーマンスを発揮するという考え方は、基本的には心の状態をいかにコントロールするかという話です。
辻先生の活動がスポーツ界以外に拡がっていることからもわかるように、多くの人たちから求められているスキルではないかと思うのです。

■ さまざまなジレンマと戦わなければならない現代の企業人たち

スポーツ同様、ビジネスにおいても当然「結果を出す」ことが求められます。

「結果を出す」ことは大変重要ですが、結局のところその結果には、景気動向、競合のとる戦略、取引先企業の業績、上司や部下との関係、
あるいは天候のような自然現象、等々、様々な要因が介在しており、基本的に自らコントロールすることは不可能です。

もちろん、「結果を出す」ために最大限の努力をするのは言うまでもありません。
ただし、“結果”に捉われすぎると、“結果”が出ないが故に“パフォーマンス”の質が低下し、
さらに“結果”を出しづらい状況に陥っていくという悪循環を引き起こします。
だから、“結果”に捉われずに“パフォーマンス”の質を高めることで、求める“結果”を出しやすい状態をつくらなければならない。

まずは頭で理解することが大切ですが、頭で理解したとしても実践できる状態に至るまでのハードルは高いでしょう。

また、企業側も「みんなで頑張ろう!業績が上がればみんなそれなりの待遇を受けられるから」という組織的なマネジメントが不可能になり、
個々人の成果によって処遇が決まることが主流になっています。
しかしながら、個々人で出せる成果は自ずと限界があることも事実です。

このような難しい現代の環境こそが、企業が積極的にメンタルヘルス対策を実施しなければならない背景にあるのではないでしょうか。
■ 脳の勝手な“意味づけ”で人は“ノンフロー”になる

持てる力(パフォーマンス)を最大限発揮するのは、自らコントロール可能なことであり、
そのためには“フロー”をキープすればよいのであれば、やらない手はありません。
ところが、これがなかなか難しいことなのです。

“フロー”の逆の状態を“ノンフロー”と言います。
“ノンフロー”は、心が揺らぎ、捉われている状態で、当然パフォーマンスの質も低下します。
しかし、人間の脳は放っておくと外部の状況に自ら“意味づけ”して“ノンフロー”に陥ってしまう癖を持っています。

営業マンのところにお客さまからのクレームが入ってきた場合、まず謝罪をして、次にクレームの要因になった問題を特定し、
対応策を提示しながら、あらためて謝罪をして怒りを収めてもらう、といった動きをしなければなりません。
多くの営業マンは、この間、気持ちはクレームにかかりきりになっており、“ノンフロー”になっています。
当然、パフォーマンスは下がり業績は停滞するでしょう。

また、アポイントをとるために100件電話しようと電話を掛け始めた場合、
なかなかアポイントがとれなかったり、電話先から文句のひとつも言われたりすると、
“ノンフロー”になって、パフォーマンスが下がり、電話をかけるモチベーションを失わせます。

クレームに関しては、「“嫌な”お客さまに当たってしまった」、アポイントの電話は「“嫌な”仕事だ」と、
脳が“意味づけ”してしまい、“ノンフロー”になるのです。

もっと単純な例を上げると、通勤時に雨が降っているだけで「“嫌な”雨だ」と“意味づけ”して“ノンフロー”になってしまいます。

これらは結局、パフォーマンスの質の低下を招いているため、クレームが長期化する、アポイント獲得率が著しく下がる、
といったカタチで、“結果”にも悪影響を及ぼすことになります。

実にもったいないことだと思いませんか。

“フロー”をキープするためには、脳が勝手に“意味づけ”して“ノンフロー”に陥ってしまうという自らの状況に気づくことが重要なスタートになります。

「“嫌な”お客さまなんかいない。お客さまの方が困っているのだから、自分のパフォーマンスを上げないといけない」

「“嫌な”仕事なんかない。アポイントの電話なんて要するに確率の問題で、とれないお客さまの方が多いのだから、いちいちへこんでいてもしょうがない」

様々な外部要因や“ノンフロー“の状況に陥っていることに気づいて、そこから離れるようにする。これを常に意識するようにしましょう。

■ “フロー”の組織化がメンタルヘルス対策の特効薬

この“フロー”の話をすると、「自分はいつも“フロー”だから全く問題ありません」などと言う方がいらっしゃいます。
特に管理職に多いので注意が必要です。

なぜなら、こう言い切る管理職に限って、大抵の場合、周囲のメンバーを“ノンフロー”に追い込んでいながら、
でも自分は“フロー”などと言う“偽フロー”だからです。

真の“フロー”実践者は、当然周囲も“フロー”に巻き込む力を持っています。

管理職であれば、部下のパフォーマンスを下げてしまうと本来出せる“結果”すら出せなくなることを理解しているので、
会議などの場においても、“結果”が出なかったことを追及したり、怒鳴ったりするようなことはしません。

“結果”を出した部下を褒め、“結果”の出なかった部下を励まし、そして会議の場にいる全員に秘策を授けるのです。
秘策と言っても、優秀な部下が実践していることを事前にヒアリングして、全員が理解・実践できるような行動に変換している程度の話なのです。

「褒めて、励まして、秘策を授ける」が“フロー”な会議なのかも知れません。

本当に“結果”が欲しいのであれば、“結果”だけを追い求めるマネジメントは逆効果になります。
ビジネスにおける“結果”はコントロールできないもの、という現実を直視して、
組織あるいは部下のパフォーマンスを最大化するマネジメントができれば、その時点で得られるであろう最高の結果を出すことができるのです。

このように考えると、メンタルヘルス対策はもちろんですが、組織の“フロー”化を通じて業績を向上させることも十分可能なのではないでしょうか。

(出典:ダイヤモンド・オンライン

川原 慎也
株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント
経営者・幹部様向け/攻めるPDCAマネジメント・顧客満足度アップ
外資系自動車メーカーにて営業、マーケティングなどを経験したのち、1998年船井総合研究所に入社。年商1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業態を問わず幅広くコンサルティングを行っている。 PDCAを切り口に現場の行動に変化をもたらし、企業を新たな成長のステージへと導くコンサルティングが近年高い評価を獲得。