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勝ち残る会社の人事戦略【2】

(3)キャリアパスを魅せる
頑張れば報われるだけでは、モラルが上がるはずもありません。そこでキャリアパス制度をつくり魅せていく必要があります。キャリアパス制度とは、自分の将来・人生設計をイメージして、この会社で働く目標を示す制度です。当然のことですが、本気でそうなりたいと思えるような魅力的な将来でなければなりませんし、何をどのように頑張れば、キャリアアップができるのか?が具体的にイメージでき、尚且つ、実現出来そうと思えるものでなければなりません。

キャリアパスは、役職制度や等級制度として賃金などの処遇上の区分や、職務権限や責任や、人事や教育等とも密接につながってきます。ですから人事制度の基幹制度ともいえる制度です。
 
キャリアアップの作成ステップ
まず、キャリアステージごとの役割を明確にする必要があります。一般的にこのステージを等級や役職となります。働く人にとって重要な関心事の一つである賃金や賞与等と結びつけるために、等級や役職ごとの賃金レンジ(=目安の賃金)も決めておきます。次にキャリアアップ(=昇進・昇格)をするための条件として、スキル、経験、実績、人事評価などの基準を決めていきます。ただ、基準を示すだけでは実現イメージは高くなりません。

個人の自主的な努力に委ねるのではなく会社としての教育や、計画的に業務経験を積ませるなどの支援を仕組み化していくことも検討します。最後にキャリアアップのスケジュール化をします。もちろん個々人の能力や態度により差が出てきますが、新卒3年で主任…10年で課長…なども、目指すモデルを示めしていきます。


(4)評価制度の課題と活用
一定以上の規模の会社になれば、昇給や賞与などの処遇を決定するうえで不可欠なものであることは間違いないのですが、評価制度でどこまでパフォーマンスが上がるか?は人事に携わる者にとって永遠のテーマです。評価制度には両刃の剣の面もあり、運用を間違えると、パフォーマンスが上がるどころか低下させることもあります。

過度な成果主義を導入して結果、組織が部分最適と現在最適を追及し過ぎて、業績まで悪化してしまった事例も決して少なくありません。もともと人事評価における評価は、短期的な成果に対しておこなうものですから、どうしても現在最適になりがちです。もちろん人事評価だけの問題ではなく企業文化の問題が大きいのですが、最近の不祥事を起こした名門企業を見ていると、現在最適を最優先させる価値観の危うさを痛感します。

人事評価をより意味あるものにするために抑えておくことの一つに「意識すること」と「評価項目にすること」を混同しないことです。特に定量的な評価においては十分に注意することが必要です評価項目に個人の意思決定や行動が数値に直結することであります。経営である以上は営業利益の確保が必要ですから、部門責任者には営業利益を意識してもらいたいという思いがあるのは当然のことです。

しかし、実際に現場責任者の裁量では、売上を増やすことを除いて出来ることは限られています。人件費も含めて部門責任者でコントロールできる幅は殆どありません。現場に価格決定権があるのであれば粗利率コントロール位はできますが、裁量権を考えれば、売上高と粗利益に責任を持つのが精一杯なところです。

業績が好調なときはそれなり意味があるのですが、業績が悪化してくるとデメリットの方が大きくなっていきます。数値結果が歴然としているので、一見、納得性が高いように見えますが、納得しているのではなく、反論の余地がないだけです。納得できないのに正論で反論しづらい状況が、続くと多くの場合、思考停止で何も感じなくなってしまうのです

業績制度が、阻害している側面もあります。小売業やサービス業では営業利益を評価項目にしているところがあります。こういう会社では、店長や管理職と言われる一部の社員がサービス残業をして人件費を抑えて利益確保しようとしています。労基法上の問題もそうですが、それを見ている他のスタッフは、店長になりたくないと思います。これではワークライフバランスを考える人から選ばれないのは当然です。人材不足は加速ていきます。

利益出すための評価項目と行動が、スタッフ不足と言う機会損失で利益を損なっているなんて本当に皮肉な話です。普通の人でも、無駄な人件費を垂れ流すような人はいませんし、もしそれがあるなら、しっかりと指導すればいいのです。評価制度を作って、年に1~2回賞与前もしくは定期改定前に評価をするだけでは、あまり効果がありません。せっかく手間をかけて制度を運用するのですから、根付かせていくことが求められます。

ドラッカーが「マネジメントの究極ゴールは、マネジメントしなくても良い状態になること」のような主旨を述べていますが、評価制度も社員が全員人間的に成熟しており、会社に対し信頼感があれば、評価制度がなくても何も問題はないのかもしれません。

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山田 公一
株式会社船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント
大手化粧品会社で、11年にわたり営業、販売スタッフ及び小売店指導に従事し、2001年 船井総合研究所に入社以来、「利益=社員数×生産性」の方程式を信条として、やりがい の持てる人事(評価・賃金)制度の構築及び運用の支援、管理職研修をおこなっている。 著書に「やさしくわかるお店の数字」(日本実業出版社)「パートアルバイト採用戦力化・定着マニュアル」(同文館出版)