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地域を変える反転のシナリオシリーズ【3】 「地域社会共育が生み出す可能性」【前編】

このコラムを目にしたあなたにこんにちは!船井総合研究所パブリックイノベーションチームの伊東威(いとうたけし)です。第3回の今回は地域活性化の出口【2】「地域社会共育」について記します。このテーマは私のコンサルティングにおいて短期的にも中長期的にも「最重要テーマ」と考えているので、2回に分けて執筆いたします。今回はその【前編】です。どうぞよろしくお願いします。

■「『教育』が人を育てる」のではない
多くの企業経営者の悩みとして「社員教育」という声が多く聞かれますが…。このコラムを目にしたあなたは「『教育』が人を育てる」と思っていませんか?私はちょっと違う考えを持っています。「『学習』によって人は自ら育つ」と考えているのです。赤ちゃんが泣くのは「お腹が空いた」「排便をした」「淋しいから構って」という意思表示ですが、これはお母さんから「意思表示したい時は泣きなさい」と教育されたわけではないですよね?「泣く」という行為で意思表示できることを赤ちゃん自ら「体得=学習」しているのです。

このことからも、私は「教育は学習の介添え」と考えています。ですから、あなたが関わる組織において、もし「アイツに〇〇させる」というような使役動詞が頻繁に飛び交っているとしたら(自分が使っているとしたら)要注意!ちょっと立ち止まって「学習が生まれる機会が損なわれていないか?」と自らに問いかけてみることをオススメします。

■「ユネスコ学習権宣言」をご存知ですか?
1985年にパリで開催の「第4回ユネスコ国際成人教育会議」で発表された「ユネスコ学習権宣言」をご存知ですか?そこには、「学習権とは、読み書きの権利であり、問い続け、深く考える権利であり、想像し、創造する権利であり、自分自身の世界を読み取り、歴史をつづる権利であり、あらゆる教育の手だてを得る権利であり、個人的・集団的力量を発達させる権利である」と記されています。「あらゆる教育の手だてを得る権利が学習権」ということならば、「教育は学習の介添え(手だて)」という私の考えもあながち間違いではないのでしょう。

ご存知のとおり「義務教育」という言葉はありますが、「義務学習」という言葉はありませんよね?「学習」とは「自らが自主的・自発的・能動的に獲得するもの」なのだと思います。このユネスコ学習権宣言に込められた「学習は権利である」という理念を、自治体における政策の策定と実行を通じて地域に広げ、具体的なカタチにしていくのが私が描く「地域社会共育」の総論としてのイメージです。

■コメ農家のおじいちゃんがヒーローになる日
ひとつ各論として事例をご紹介しましょう。今や震災被害から復活までの軌跡をTV等で取り上げられ、全国的にも知られるようになった岩手県陸前高田市の株式会社八木澤商店の9代目・河野通洋社長は、実は私が大卒後に出逢って以来、愛ある叱咤激励で育ててくれた「実の兄貴」のような方です。その河野社長から聞いた「コメ農家のおじいちゃんがヒーローになる日」という話に、私は「地域社会共育」の必要性と可能性を改めて見出します。八木澤商店では、地元の酒蔵・酔仙酒造と一緒に、地元のベテラン農家の協力を得て、地元小学生へ田植えや稲刈りを体験する機会をつくってきました。

おそらく、大々的に「食育」が叫ばれるよりもずっと前から行なわれています。泥だらけになりながら、害虫を手で取り除いたり、荒らしにくる鹿を追い払ったり、小さな子どもたちにとっては決して楽な作業ではありません。そんな中、慣れた手つきで作業をするコメ農家のおじいちゃんを見て、子どもたち全員から「おじいちゃん頑張れ~!」と大きな歓声が上がるそうです。まさに「コメ農家のおじいちゃんがヒーローになる日」なんですね(笑)。そして、子どもたちは一緒にあぜ道に座って塩ニギリと味噌汁をほおばりながら、「おいしいご飯がどのようにつくられるか?」を実体験の中で「学習」するわけです。

それだけではありません。きっと八木澤商店や酔仙酒造の社員の皆さんや農家の方々も、「子どもにとって何が大切で何が必要なのか?」を「学習」しているはずです。相互に生まれる学習を私は「共育」と定義しています。この「共育」は前職の中小企業家同友会の重要な理念でもあります。このような「共育」が地域の隅々に展開されていく「地域社会共育」こそ、地域活性化の最重要テーマだと私は考えています。 次回の第4回では、【後編】として事例を中心にご紹介しましょう。

【著者プロフィール】
伊東 威(いとう たけし)
株式会社船井総合研究所 パブリックイノベーションチーム
前職で全国4万4000名、宮城県で1000名の中小企業経営者団体にて全国最年少の事務局長に就任。県内各地の中小企業経営者および社員向けのセミナー企画運営を手がけるほか、行政や学校や商工団体と中小企業政策やキャリア教育プランなどの策定・実行に取り組む。その後、株式会社 船井総合研究所の「パブリックイノベーションチーム」への配属を志願して入社。
得意分野は、産学官の強みや特色を活かした中小企業・小規模企業振興政策の策定・実行支援。「義理と人情と浪花節を科学する」が信条。