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業務改善を成功に導くファシリテーションの2つのポイント

組織目標の伝達とは、現場に納得感を与え、彼らの動きに顧客に対するメリット、ひいて自社に対するメリットに向かう志向性を持たせることを目的としています。
これこそが組織を動かす原動力であり、業務改善を継続するために必須のベースといえます。
しかし、会社を構成する社員各々が表層的にも潜在的にも異なる感性を持つ以上、彼らを一様に納得させ、統一的な志向性を持たせることは容易ではありません。
組織統一的な納得と志向性を実現するポイントの一つとなるのは、リーダー等によるファシリテーションです。

今回は、コンサルタントの立場でクライアントの業務改善プロジェクトをファシリテートする際に留意しているポイントについて記載します。

当方がファシリテーションのポイントとしているのは、大きくは以下の二つの考えに集約されます。

(1)納得できる論理性があること
(2)同意できる実現イメージがあること

(1)納得できる論理性があること
上述のように、組織を構成する社員は多様な感性に基づいて動いており、これらをある統一的な志向に基づいて業務改善に向かわせるには、論理という個々人の判断に依拠しづらい、つまり普遍性のある手段を使う必要があります。ここでいう論理性とは、”組織がどこを目指しているかの目標”、”目標と現状のギャップを捉えた課題”、”課題解決の方向性”といったものが、一連の筋の中で説明できる状態になっていることを指します。

(2)同意できる実現イメージがあること
見た目上の論理性があるように見えても、実現性が伴ってないケースは各所で見受けられます。この実現性が論理性に伴っていないと、”確かに言っていることは正しい(論理性)。でも、達成は無理・・・(実現性の不備)。”という徒労イメージを当初からスタッフに与えてしまい、やはり組織は動きません。

業務改善をファシリテートをするにあたっては、これら(1)と(2)を創出し、メンバーが主体的に業務改善に向かうよう、後方支援に力を注ぎます。
さらに、(1)(2)は以下のような要素で考えています。

(1)論理そのもの+参画のステージ・収斂のステージ
論理性といっても、論理そのものの精緻性のみが問われるわけではありません。
どちらかというと、論理性を作り上げる過程のステージの方が重要です。
参画のステージとは、業務改善の実行に関わると思われる主要な利害関係者が、自らの意見が取り込まれている実感を持てるようにする場です。
コンサルタントが勝手に考えた論理、リーダーが勝手に考えた論理、などといったイメージを持たれてしまうと、その論理の妥当性如何に関わらず、業務改善の多くを担う現場のスタッフが反発し、改善が停滞してしまいます。
このステージでは、議論の拡散、つまりは論理性の歪みをある程度許容してでもプロジェクトメンバー各々からあらゆる意見を出させて、メンバー全員の参画意識を高めることを重視します。
収斂のステージとは、参画のステージで拡散も含み多様に抽出された問題や課題、対策オプションなどを論理的に整理していく場で、参画のステージで得たメンバーの参画意識をさらに強固にします。自分たちが変えていかなければならない根源に議論が向かっていくので、他人事ではいられなくなるからです。
ここで重要なのは、整理の過程で、メンバーに共通の優先順位の価値観を持たせることです。収斂させるとはつまり、重要と思うものを持ち上げ、重要性の低いものを除外してスリム化することなので、その過程で共通の価値観が醸成されるのです。これら3つの要素を複合的にファシリテートすることで、メンバーは自分たちが決めたことに納得し、業務改善に統一的な志向性で向かうことができるようになります。

(2)適切な目標・評価スキーム+マイルストーン・アクションプラン
現実的かつストレッチな目標と評価スキーム、目標に向かってどのようなステップを踏んでゴールに向かって動くのか(マイルストーン)、そのために具体的にどのような個別アクションを積み上げるのか(アクションプラン)、が適切に組まれていることが、実現イメージを現場が持つために重要です。
ここでのファシリテーションのポイントは、手段に埋没せず、目標認識を念頭に置き続けるようにすること、また、マイルストーンとアクションプランを適宜使い分けて、全容と個別アクションを対比的にイメージできるようにすることです。
どちらかというとよくあるのは、WBSを微細に組むことで、個別アクションに目が行き過ぎ、全容が見えなくなってしまっているケースです。
この場合、さらに本来的な目標に対する意識も薄弱となり、WBSに定義された個別アクションの遂行にのみ邁進して結果が伴わない状態に陥ってしまうことが多いようです。

このように、ファシリテーションといっても、細かなテクニック云々ではなく、各シチュエーションにおいて考えるべきことにメンバーが注力できるようにサポートすることが業務改善を成功に導くポイントだと思います。
(この記事は2008年8月20日に初掲載されたものです。)