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日本に残るものづくり

1.日本企業の競争力
今伸びているマーケットは新興国であり、そして、これからも伸び続けるのは新興国のマーケットである。そして、新興国での“ものづくり”は、先進国の“ものづくり”よりも安い。規模の経済や物流の効率性を考えると、ものづくりは日本で行うよりも、新興国で行う方が優位性があると言わざるを得ない。

事実、産業の米と呼ばれている金型産業はすでにかなりの部分、海外に生産が移ってしまっており、さらに冷間鍛造や表面処理など技術的な要求が非常に高い製品においても、日本企業は自動車生産台数が減少している国内よりも、自動車生産台数が伸びている中国やインドネシアでものづくりを行うようになってきている。今、誰もが「果たして、日本に、ものづくりは残るだろうか?」という課題に直面している。

日本にものづくりを残すために必要な条件は果たして何だろうか?それは新興国に負けない競争力である。しかし、QCDで考えた場合、CのコストとDの物流で新興国に対する競争力を持ち続けることは不可能であろう。そう考えると、Qの品質での優位性を確保し続けることが最も重要である。しかしながら近年韓国・台湾・中国企業の品質面での改善は目覚しく、ハイエンドではないボリュームゾーンにおいては、価格と品質のバランスが取れているこれらの国の製品の方が、日本製品よりも優位にたつような事例も現れ始めた。日本企業が品質面の優位性だけに特化していれば、競争力を保つことできるというわけではなく、最もビジネスボリュームのある領域においては、例え品質的に優れていても、価格が高すぎれば、やはり市場を失ってしまうのである。

2.生産地の最適化
そういった中、今や日本企業は、日本にものづくりを残すことに固辞するのではなく、海外に積極的にものづくりを移して、価格競争力を保持し続けることを視野に入れて取り組まなければならなくなってきている。つまり、“生産地の最適化”である。日本に残すべきものづくりと、海外に移すべきものづくりをしっかりと仕分けして、最適な場所で生産を行わないと、グローバル化された社会では、日本国内におけるシェアすらも海外企業に奪われてしまうことになりかねない。
実際に、すでに大手企業は生産地の最適化を前提としたグローバルサプライチェーンを構築し始めており、それによって少しずつ変化が現れ始めている。

例えば、少し前までは、日本企業にとって、価格競争力の確保を目的として新興国でものづくりを行う場合は、品質のコアな部分を、自社の海外拠点にすら開示しないということが常識であった。また国内で生産する場合は、ロボットを導入して自動化するが、新興国で生産する場合は、設備投資を極力おさえて、人海戦術で対応するといったことも常識であった。つまり、明確に、国内でのものづくりと、新興国でのものづくりを区別していたのである。

しかしながら、昨今では、新興国の拠点でも、価格ではなく一定の品質を維持することを目的として、日本でのものづくりのノウハウを積極的に新興国に共有するようになってきており、また日本と比較して相対的に人件費が安い新興国でものづくりを行う場合においても、日本生産品と価格の差ではなく、現地の競合との価格差に焦点をあて、新興国でも生産の効率化をはかるためにロボットを導入するようになってきている。

このように、生産地の最適化が行われるに従って、日本生産=品質確保・生産効率化、新興国生産=コスト競争力という構図ではなく、日本にものづくりを残し続けるための本当の意義は何か、ということを考えなければならなくなってきている。

3.日本の競争力の源泉は、手間のかかる仕事
このように、企業が生産の最適化を行うようになってもなお、明確に日本に残り続けているものづくりがある。それは、手間のかかる仕事である。

例えば、多品種少量の生産品が挙げられる。多品種少量の生産品は、新興国でのものづくりでは逆にコストアップになる。なぜならば、多品種少量品を生産するためには、適切に工程を管理することや、不良品率をおさえること、工程の切り替えや機械の洗い替えを適切に行うことが重要である。これらの作業は日本企業が長年にわたって培ってきた職人技術であり、いくら韓国企業や台湾企業や中国企業が学ぼうとも、短期間では決して追いつくことのできない領域になっている。

これからの日本企業は、むしろ、積極的に、手間のかかる仕事、非効率な仕事に取り組んでいかなければならないと思う。手間のかかる仕事、非効率な仕事の、品質を維持した上で、効率的に行うことが、日本企業の強みを更に高め、グローバル市場で競争力を維持し続けるために、今見えている答えであると思う。