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上海自由貿易試験区

中国の上海自由貿易試験区が話題になっている。人民元の自由化、金利の自由化、人民元のクロスボーダー取引、金融、旅行、医療などサービス業の開放拡大、多国籍企業によるアジア・太平洋地域本部の奨励など、これまでの中国市場の閉鎖性を一気に覆す、驚きの内容である。

中国系の金融機関大手と外資系ではアメリカのシティ・バンクとシンガポールの星展(DBS)がすでに支店設立を表明していたが、共産党大会直前にドイツ銀行や日系メガバンクも支店設立を表明した。自由貿易試験区が公表されてからまだ1ヶ月そこそこでの出来事であり、いかに中国経済が重要であるかを感じざるを得ない。

この上海自由貿易試験区によって、シンガポールと香港は大きな影響を受けることになるだろう。東南アジア、東アジアそれぞれの金融セクターの役割を担ってきたこの2カ国は、アジア金融市場の中核になろうとしている上海の出現によって、金融市場における自国のプレゼンスを脅かされることになると思われる。一方、国内市場中心で、自国内に十分な産業規模がある東京にとっては、むしろ歓迎すべき内容となるかも知れない。日系メガバンクの中国拠点は閉鎖的な中国金融市場に苦しんでおり、特に総量規制や投注差の規制によって、日本の顧客の中国拠点への十分なサポートが、したいのにできないというジレンマに陥ってきた。東京と上海の金融市場の連動性が高まることは、世界最大の日系企業拠点数を抱える中国市場に金融サービスを提供するにあたって、利便性が大いに高まることが予想される。

この原稿を書いている時点では、まだ中国共産党大会前であり、もしかしたら共産党大会での決定事項によって、状況が左右されているかもしれないが、今回の上海自由貿易試験区は、中国政府がTPP交渉参加をにらんだものであることは、ほぼ間違いないと私は見ている。TPPは中国を孤立させるための枠組みであるという見方が多い中で、今や経済大国となった中国にとって、TPPを警戒するよりも、TPPの枠組みに入ってしまった方が、自国経済にとってメリットがあることは間違いない。

中国が8%前後の安定的な経済成長を続けることができたのは、WTO加盟による恩恵が大きいことは周知の事実であり、中国にとって、持続的に成長を継続するためには、世界的な枠組みであるWTOではなく、地域間連携の枠組みが不可欠なことは十分認識済のことであるだろう。しかしながら中国自体がTPP交渉参加への要件を充たしていないため、現時点では交渉参加したくとも参加できない。この状況を打破するために、まず上海で金融を中心としたサービス業を開放し、中国自身が、この矛盾に耐え切れるかどうか、各国の中国市場への取り組みがどう変わるか、自国企業の対外取引が同変わるか、それを試すための試みであると思われる。だから、「試験区」という名前がついているのであると思われる。

上海自由貿易試験区の誕生によって、アジア経済の仕組みがどのように変わるか?それくらいインパクトのある話であると思っており、注意深く見ていきたい。