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中国での日本型経営

11月15日に上海、16日に北京、17日、18日に瀋陽を訪れた。いずれも中国の大都市であるが、それぞれで雰囲気が異なる。北京、上海での物価はほとんど日本と変わらない。道行く人に道を尋ねても、英語が通じることが多い。1年前と比べても、大きな変化を感じる。
特に印象深かったのは、瀋陽である。瀋陽は今、地下鉄が開通し、空港も新しく建設中で、インフラが整えられようとしている。瀋陽は北京や上海と比べても、3年遅れているといわれているが、来年には、北京や上海と変わらない都市になっているのではないかと感じる。

今回瀋陽では旅行会社、不動産ファンド、メディア会社のそれぞれのオーナーと出会ったが、その目の輝きが、普通ではない。自分達が成長するために、貪欲にこちらの意見を聞いて、メモを取る。自分達の仕事に誇りを持ち、成長を確信しながらも、今進んでいる方法に疑問を持っている。皆、経済が成長する中、自分達の会社があまりに急速に成長しているため、どうコントロールしてよいのかという不安を抱えている。十分な富と名声を手に入れた一方で、それを一瞬で失うほどの投資を継続しており、我々のような日本のコンサルタントの客観的な意見を求めている。

瀋陽にように、急速なスピードで変化している都市が中国のいたるところに存在しており、そこで急激に成長した企業は、いずれもこの変化のスピードについていくために、どのように舵取りをしていくか悩んでいる企業が多い。これまでの成功体験に固執するのではなく、これからの変化のスピードについていけた企業だけが生き残ることができることを多くの中国の経営者が感じていると思う。

今の中国では、消費者は豊かになる一方で、賢くなっている。今までは背伸びをして欲しいものを手に入れていたが、今はよいものを良いものを少しでも安く購入しようという嗜好に変わっている。インターネットの普及も急速に進み、消費者も相場観を持って商品を購入している。

そこで改めて、「営業力」が必要となってきている。あまりに早い変化のスピードに対応するためには、経営者のセンスだけでなく、現場の情報を適切に経営方針に反映していくことが重要である。トップダウンでの経営のスピードだけでなく、現場の従業員の意見を汲み取り、適切な経営判断をすることが求められている。そこで、もともと流動性の高い中国の労働市場において、いかに人材を育て、人材を定着させるかということが、これまでにもまして、中国の企業では重要になっている。

今の多くの中国企業には「企業理念」というものは存在していない。利益重視、成長重視の段階で、「経営理念」というものを明確に定める必要はなかったからである。しかし、これからの時代、変化のスピードについていくためには、この「経営理念」が必要である。時代の変化を感じ取っている現場の従業員にまで「経営理念」を浸透させ、「経営理念」に基づいて現場の従業員が適切な判断をし、時として経営層に対して意見を提言することが、経営者が時代の変化についていくための唯一の方法である。また、経営理念に共感し、経営に参画しているという意識を持った従業員は、簡単には他社のハンティングに誘われて会社を去ることもない。中国では熱心な経営者はこれから勉強をして、「経営理念」を重視した経営を行っていくことになるだろう。

中国に進出している日系企業にしても同じことである。中国に適応した経営を行うことが今までの中国の日系企業にとって重要なことであったが、これからは日本型経営を現地法人にも適用していくことを考えていかなければならないと感じる。日本型経営は、中国型経営よりも進んだ考え方である。中国の経営者が、日本型経営を必死になって学んでいる今、日系企業は、自らの強みを押し殺して、中国の経営手法に迎合する必要性はなくなってきている。日系企業で働く従業員にも、中国企業と比べた相対的な賃金の高さだけでなく、日本企業の進んだ経営を学びたいという人材も多い。事実、私の友人は、これからは日本企業から学ばなければならないという動機で、政府の役人から日系の大手不動産会社に最近転職した。

反日感情がおさまっていない今、現地の日系企業は改めて、自社の理念を考えるべきである。自社の存在が、どうやって中国市場に貢献していくのか、それを明確に打ち出し、従業員の共感を得た企業では、反日デモは起こりようがないと思う。