MENU
×

MENU

中国でビジネスをするということ

かつては中国で仕事をするためには、「カンペイ」が不可欠と言われた。カンペイとは、日本語で「乾杯」のことであり、中国式の円卓で中華料理を囲みながら、注がれたお酒を飲み干す。
お酒はビールであるときもあれば、紅酒とよばれる紹興酒であるときもあれば、白酒のときもあれば、ワインのときもある。かつて、中国で「カンペイ」が一旦始まると、つぶれるまで飲まなければならない、これは中国の文化だ、と教えられた。

丁度10年ほど前、仕事で西安に1週間程滞在していたときに、毎晩、中国人しか行かないようなバーに行っていた。バーの中では、いたるところで乾杯をしている。サイコロをつかって、いわゆる、日本でのチンチロリンと似たゲームを行っていて、負けた方が、一気にお酒を飲み干す。
私がバーに入ってから、出るまで、ひたすらそれを繰り返していた。中国人はなんとお酒が強いのだろうと思った。そこに一緒にいた仕事のパートナーに、負けたら飲まなければいけないのか?と聞いたら、「勝負だから飲まなければいけない、ただし、私は飲めないけど」と、言って笑っていた。チンチロリンは、酒好き同士で行っているだけのことらしい。中国人の誰もが、カンペイが好きなわけではない。

一方、中国でビジネスをするためには「カンペイ」が必要ということは、事実である。それが中国の文化であることも事実である。そして、この「カンペイ」は、日本人と中国人との間で行われる場合は、ただの文化ではないことを認識しなければならない。日本企業は早くから中国に進出してきた。実は、感情的には、日本人が中国で大きい顔をするのを、中国人は快く思っていない。
その一方で、日本企業の中国進出は、中国人にとっては、経済的には好ましいことである。そこで、「カンペイ」をして、中国人なりに、相手の日本人を知ろうとする。「カンペイ」に、とことん付き合い、日本人がつぶれたら、翌日、中国側は、喜んでサインするそうだ。そのときの感情は、「この日本人は根性がある」といったものらしい。そして、その日本人は、それ以降、中国で仕事がしやすくなる。

中国人は、国民感情的に、日本人を快く思っていない。しかし、中国人と1対1でつきあうと、どの中国人も、たとえ日本人であろうとも、個人として好きになろうとしてくれる。「カンペイ」は、中国人と日本人という、国民感情に深く根付く歴史認識を乗り越え、人間と人間との関係として、本当の信頼関係を得るための一つの重要な儀式であるということができる。

最近は、「カンペイ」の機会がめっきりすくなくなった。また、かつて、中国に出ようという日本人は、開拓者スピリットをもった人材ばかりだったため、たとえ「カンペイ」でつぶれたとしても、ビジネスを前に進めるためならとことんやった。
しかし、今では、すでに出来上がった現地法人に、一定期間、駐在員としてつとめあげればよいという、サラリーマンスピリットの人材も増えてきている。こういった人材には、カンペイはできない。したがって、中国政府または中国企業または、中国人との信頼関係を構築することができない。

ビジネスをするということとは、信頼関係を構築することである。このことはあらゆる業種・業態で当てはまる。そして、中国でビジネスをするということは、中国人と仕事をするということである。それならば、中国という国を好きになり、自社の利益と同時に、中国という国の利益にもなるような仕事をしなければならない。もし、中国ビジネスに成功のセオリーがあるとした、その、中国を好きになること、中国に好きになってもらうこと、以外にはないだろう。