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今、東南アジアが面白い! 活気を日本に持ち込み成長に結びつけるためには何から始めるべきか

■ 増える東南アジア市場への進出

ここ数年、大企業だけでなく、これまで海外進出に縁がなかった中小企業の海外進出件数が増えている。
そして、今後もこの数は増えることが確実視されている。

これまでアジア進出と言えば中国や台湾だったが、近年注目されているのはタイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアなどASEAN諸国だ。
進出する企業の業種・業態は、製造業、IT関連、化粧品、飲食、デザイン、各種サービスなど多岐に渡っている。

筆者は、中小企業のASEAN諸国への進出を支援する業務を中心に行っている。
本連載の筆者の回は、今後数回、ASEAN諸国への進出の成功条件、現地でのビジネス成功の秘訣を、実際の失敗例や成功例をベースにお伝えする。

これまで注目されていた中国とは違う、ASEAN諸国独特の活気や熱気を、ぜひ日本へ持ち帰って、自社の成長の原動力にしていただきたい。
そのための経営の“肝”をお届けするつもりだ。

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■ 一方で増える海外市場からの撤退

進出が増えていると述べたが、企業のアジア進出は全てが成功している訳ではない。
一度は進出を果たした企業が、様々な問題に直面して撤退するというケースも多い。

先日も、ある消費財メーカーの経営者から、
「数年前に中国に進出したが、販売を現地の代理店に任せ切りにしていたところ、
勝手に値下げ販売され、急激な収益悪化、また人件費を含むコストの高騰などの問題が重なり、撤退を決断せざるを得なかった」という話を聞いた。

企業の撤退理由は上記のようなものの他に、人材の確保・育成の困難さ、進出国や地域の突然の制度変更によって撤退を余儀なくされるなどさまざまだ。進出の一方で、撤退の数も増えている。

■ 「チャンスを掴みにいく経営者」「仕方なく決断する経営者」

海外進出を果たした経営者の動機は大きく二つに分類される。
一つは、成長著しいアジア市場に大きな魅力と可能性を感じ、積極的にチャレンジする経営者。
もう一つは国内市場での生き残りに限界を感じ、仕方なく海外に出ることを決断する経営者だ。

同じ海外進出でも経営者のマインドが全く異なる。そして、日本の中小企業の場合、後者の「仕方なく決断する」パターンが目立つ。

ただ、これはある意味当然のことかもしれない。
「日本の少子高齢化による国内市場の縮小」、「国内市場での中国企業との厳しい価格競争」、
そして「海外進出が進む取引先との関係維持」、これらが海外進出を決断せざるを得ない背景にあるからだ。
決して、積極的ではなく、これまでの事業継続のために、やむを得ず進出することを決断しているのだ。

■ 知らないから選択肢になり得ない

海外進出に限らず、企業の経営判断が消極的、後ろ向きの姿勢では、ビジネスを成功させることは困難だ。

海外で成功する多くの企業に見られる共通点は、進出する国やその市場に、経営者が大きな期待、関心を寄せ、自らが積極的に海外と関わろうとしていることだ。
海外市場に大きな可能性を感じ、モチベーションを高く維持しながら、前向きな姿勢でASEAN進出のスタートを切ることが大事だ。

ただし、いくら前向きな姿勢が必要と言っても、多くの経営者にとっては簡単なことではない。
なぜなら、経営者の多くは、アジア市場の情報をほとんど持ち合わせてはいないからだ。

自社が進出を検討する国の制度、慣習といった事情や市場特性を知らなければ、
たとえ大きなビジネスチャンスがあっても、積極的に攻勢をかけていこうという気持ちにはなれないものだ。
消極的で、他人任せの経営に陥りやすくなり、それは、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうだけでなく、
進出国において日々発生する問題や解決すべき課題への対応を遅らせ、最悪の場合、市場からの撤退へとつながる。

■ 五感でアジアに触れ、知ること――。それがビジネス成功への第一歩

近い将来、ASEAN進出の可能性がある経営者は、今、アジアという地域で何が起きているのか、少しでも関心のある国を知ることが第一歩だ。
そして、必ず時間を作ってその国を訪問することが必要だ。現地で自分自身の五感をフルに活用し、その地域に触れることで、
なぜ今、ASEAN地域が世界の注目を集めているのかを理解できるようになるはずだ。

研究と訪問を繰り返せば、ASEAN諸国でのビジネスを、自分なりに実感を持って、イメージできるようになるだろう。

■ 自分の得意な国を作ると、自ずと周辺国の事情が見えてくる

ASEAN諸国といっても、インドネシア(2億3000万人)、フィリピン(9400万人)、ベトナム(8800万人)のように、
その国自体、多くの若い世代の人口を抱えている国もあれば、シンガポール(500万人)のように国の人口は少なくても、
各種優遇税制や国のインフラを整え、仕組みで国を魅力的に見せ、海外から多くの企業や人を呼び込むことに成功している国、

また、ブルネイ(42万人)のように天然ガスや原油などの資源に依存している国など様々だ。
ASEANだけでも加盟国は10ヵ国に及ぶ。それら全てを限られた時間の中で知ることは容易ではない。

ASEAN諸国への理解を深めていく効果的な進め方は、先ず一ヵ国、得意な国を作ることだ。
今後、関係を築いていきたい国や、既にビジネスで関係のある国など、どこか1ヵ国を選択する。
そして、新聞、雑誌、ネット、書籍、セミナーなど、その国に関連する情報に意識して触れていく。

なぜ1ヵ国で良いのか。ASEANの国々は、その国単独で、経済、社会を成り立たせているわけではない。
各国間では過去から現在にかけて、人、モノ、情報、資金が目まぐるしく行き来している。
そのことは即ち、関心を持つ国の知識が深まれば深まるほど、自ずと周辺国への理解を深めていくことにもつながるのだ。

繰り返すが、その国へ一度は足を運ぶことだ。
「百聞は一見にしかず」で、一度でも現地を訪れると、
ASEAN諸国に対して、明らかにこれまでとは異なる感覚が生まれることを実感できるだろう。
この感覚を味わうことこそがビジネスをスタートさせ、成功させていく上でも重要なプロセスになる。

■ シンガポールからASEAN諸国を知る

「一ヵ国からアジアを知る」と述べたが、筆者の場合、これをシンガポールから始めた。

シンガポールは人口500万人ほどの小国だが、ASEAN諸国のビジネス、貿易の要衝として世界中から人、情報、資金が集まる。
一人あたりの名目GDPを見てもここ最近では日本のそれを上回っている。

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現地を訪れると、グラフからは見えない情報が得られる。

日本の銀座と表参道を合わせたようなオーチャードロードには、日本の高島屋や伊勢丹をはじめ、
多くの百貨店やショッピングモールが立ち並び、そこには世界中の有名ブランドが入っている。
そして、平日、休日関係なく、多国籍の観光客で溢れ、大変な賑わいを見せている。

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2011年には1300万人を超える観光客がシンガポールを訪れているのだが、
そのトップ3は、インドネシア、中国、マレーシアだ。
先日も、オーチャードの百貨店で店員にヒアリングをしたところ、高額商品を多く購入しているのは、
週末にシンガポールに遊びに来るインドネシア人富裕層とのことだった。

実際に、2010年にオープンし、日本でもソフトバンクのCMで有名になった屋上プールがある高級ホテル、
「マリーナ・ベイサンズ」は、世界中から観光客が集まり、連泊で予約を取るのが難しい状態が続いている。

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こういった情報からも、アジア地域の中でインドネシアの成長率が高いことを把握できる。

1ヵ国でも、そこでのビジネスに関係することや興味、関心が高い情報を一つずつ拡げていくとが、ASEAN諸国への理解を深めていくことにつながる。

単発的な情報をバラバラに知識として持っていてもビジネスには役立たない。
一つ一つの情報が有機的に結びつき、その情報に対して実感を持つことができた時に、それはビジネスにも活用できる生きた情報となる。

■ アジアビジネスの成功を日本の活性化につなげる視点

シンガポールに1300万人もの観光客が訪れた2011年、日本を訪れた観光客はわずか620万人ほどだった。
シンガポールの面積は707平方kmと、東京23区ほどの広さしかないことを考えると、日本を訪れた観光客数がシンガポールの半分とはあまりにも少ない数字だ。
シンガポールでは、2012年には更に2011年の数字を10%ほど上回る観光客が訪れるとの予測も出ている。

シンガポールのオーチャード通りに立つと、いつも思うことがある。
「どうにかしてこの活気を日本に持ち帰れないものか」と。

ここ最近の停滞する日本経済を活性化させていくためには、約430万社、全企業数の99.7%を占める中小企業の復活無くして実現することは不可能だ。

世界に誇れる技術、ノウハウを持つ日本の中小企業がアジア、とりわけ今注目されているASEAN諸国を中心としたグローバル市場で活躍していくことこそが、自らの企業の成長と日本経済の活性化に必要なことだ。

次回以降、ASEAN諸国進出の具体的な方法や成功例、失敗例のほか、事業の進め方、マーケティング方法など、より具体的な内容に踏み込んでいく。

(出典:ダイヤモンド・オンライン