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成功するグローバル戦略を中東地域から考えてみる

先日、日本でも何かと話題のドバイへ行ってきました。直接現地を訪れ、現地ローカルの方、進出している邦人企業の担当者の方々の話を聞きながら、また実際に現地の環境を肌で感じる中で、日本企業がグローバル戦略を構築していく際、今後ドバイを含めたこれら中東の地域という視点からグローバル戦略を考察していくことも有効な選択肢の一つになり得ると感じました。
今ドバイには世界のクレーンの3割が集結していると言われています。実際にドバイのいたるところで鉄道、オフィスビル、ホテル、空港、ショッピングモールなどの建設、建築の工事が行なわれている現場を目の当たりにすることができます。

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世界一高い(800m以上)のバージュ・ドバイも完成間近でしたが、先日、今度は、1,000メートルを越すビルの建築がドバイで発表されました。
ここ最近、世界的な金融危機の中東諸国への影響も新聞や雑誌等でよく取り上げられていますが、実体を掴みづらい経済の中で詳細を把握できないほど大きな損失を出し続けている北米、欧州など先進国と比較すると、中東ではその負の影響は比較的軽微なものにおさまっているようです。先日開催された金融サミットでも、サミット前にブラウン英首相がサウジアラビアを訪問して資金拠出を要請するなど中東を含めた新興国への先進国の依存度も高くなっているようです。

中東の地域が金融危機の影響を先進国ほどは受けていない理由は資源、金融制度など、いくつか考えられますが、一つは石油、天然ガスといった資源から得られるキャッシュが潤沢にあるということです。

ここ最近、確かに原油価格は値下がりしていますが、それでも産出した資源は確実なキャッシュを国にもたらし、中長期的には、中国、インド、アフリカ市場の需要は高まることが予想され、近い将来原油の価格も1バレル、200ドルまで上昇するのではとも言われており、この先、中東諸国のプレゼンスは益々高まっていくと思われます。
これと合わせて中東諸国では、単に石油やガスなど資源だけに依存するのではなく、脱石油戦略で永く国を発展させていきたいと考えています。例えばドバイですが、ドバイには元々資源が少なく、近隣諸国と比較しても早くから脱石油戦略を積極的に進めている地域の一つです。

この中東諸国における脱石油戦略の推進策の一つが積極的な外資誘致策です。例えば、ドバイでは所得税、法人税、消費税などが一切掛かりません。また、1985年にドバイに設立された経済特区のジュベル・アリ・フリーゾーンは中東の中でも最大の港湾設備を有し、100%独資での企業設立も可能なことから現在では、世界から約6,000社(日本企業は約120社)が進出し、現在も多くの企業が順番待ちをしている状況です。経済特区については、これ以外にも金融、教育、医療、ITなど多くの特区が今も継続的に設立され続けています。

このドバイの脱石油戦略については、アラブ首長国連邦のアブダビやその他、サウジアラビアなどの中東諸国も今後追随することを狙っており、こういった各国の取組みは、今後グローバルに展開していく日本の企業にとっても有利に働くことが見込まれます。
中東地域が企業のグローバル戦略にとって果たすべき役割は以下のように大きく3つに分類できると考えます。

(1)中東を経由させた日本製品の第三国(アフリカ、近隣諸国等)への輸出
(2)中東ビジネスの成功を足掛りにしたインドなど第三国へのビジネス展開
(3)中東の市場そのものをターゲットにしたビジネス展開

(1)については、先ほど述べたジュベル・アリ・フリーゾーンのような経済特区を経由した第三国への輸出です。ちなみに、この経済特区のコンテナ取扱量は年々増加しており、現在では世界7位の取扱量となっています。私は別の業務でよく中央アジア(カザフスタン、ウズベキスタン等)にも行く機会が多いのですが、そこで目にする多くの日本製品はドバイ経由で入ってきています。

(2)については、例えばドバイではインド人が全人口の約6~7割を占めています。最近、日本企業も中国やベトナム等とあわせてインドへも関心を寄せていますが、ビジネス環境の整ったドバイを足掛りにしてインド人とのコネクションをつけ、ドバイからインド市場を狙うといったグローバル戦略を立てている企業も存在します。このことはインドに限らず、中東の近隣諸国へのビジネス展開でも同じことが当てはまると思います。

(3)は、中東の市場そのものを狙うといった戦略です。例えばエジプトは人口が7,200万人、サウジアラビアで2,300万人と今後の市場として十分に考えられます。イランなども現在は政情が不安定ですが、人口が7,150万人と、将来的に安定すれば魅力的な市場と捉えることもできます。

人口の少ないドバイであっても、その一人当たりのGDPは日本並に高く、既に進出しているカー用品店のイエローハットやダイソーは当初の予想以上の収益を上げています。

今回のドバイ視察の際、イエローハットの現地担当者の方と少しお話する機会を得ることができましたが、購買層の多くはローカルの富裕層で、高額なオーディオ、ナビゲーションシステム等、高くても日本製のものが売れ筋商品とのことでした。今後は、ドバイを中心としながら、これまで以上に中東地域を重要な戦略拠点として位置づけ、多店舗展開していく予定とのことです。

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ちなみに、日本でのダイソーは100円で商品を販売していますが、ドバイでは、6ディラハム(約180円)均一と少々高めになっています。ドバイのダイソーは、現地で多く働いている海外からの出稼ぎ労働者等に頻繁に利用されているようです。

中東地域は、日本の多くの企業にとってまだまだ遠い異国の地といった印象が大きいようですが、例えばドバイのような地域において着実に収益を上げている日本の企業が存在することも事実です。
ここ最近、多くの企業が、中国進出、中国からベトナムやインドへの進出等、日本を基軸に「ルックウェスト(西方を見る)」の視点でグローバルを見ていますが、あわせて中東地域から日本やインドといった「ルックイースト(東方を見る)」の視点からグローバル市場を捉えてみてはいかがでしょうか。

グローバル戦略を構築していくにあたり、自社にとっての新たな展開が見えてくるかもしれません。