川原 慎也(2008/07/25)
事業再生・収益改善[流通・小売]
多くの業界がいわゆる“安定期”に入っており、本業での売上増が難しくなってくる中で「いかにして企業価値を高めるのか」という命題に各企業とも頭を悩ませているようです。ひとつの解として、M&Aはもはや必要不可欠な手段となってきているようで、新聞紙面でこのキーワードを見ない日のほうが珍しいくらい一般化してきています。
私どもコンサルティング会社にも必然的に、M&A前のDD(Due Diligence)、M&A後のPMI(Post Merger Integration)といったM&A関連の案件が増えてきており、これまで以上に柔軟かつ高品質なコンサルテーションを求められていることを日々実感しているところです。
さて、今回はこのPMIに関する2つの問題を取り上げてみたいと思います。
まず1つは“経営統合”そのものが目的化してしまい、そもそも最も重要であるはずのシナジー効果を想定どおりに発揮できないという問題です。定性的な話になってしまいますが、人の性格がそれぞれ異なるように、企業の社風あるいは風土はそれぞれ独特のものがあります。よって、当然のことながら“経営統合”するということ自体が困難を極める業務になるため、いつのまにか「何とか統合プロセスを終了させる」ことがあたかもゴールかのように錯覚してしまうことになる訳です。
2つめは、ありがちな話ですが、M&Aを仕掛けた側と仕掛けられた側の水面下での対立意識が解消ざれず、いわゆる「表面的な統合」になってしまう問題です。やはりM&Aとなると完全な対等関係の方が珍しいわけで、かならず上下の意識が芽生えるようです。そうなるとやや極論になりますが、“上”だと思っている側は「いいから言うことを聞けよ」といった意識をもつことでそれが態度に出てしまい、当然“下”になってしまう側は反発してしまう構図が出来上がってしまいます。
何度もこういった問題に直面してきましたが、このような状況に陥ってしまうケースに共通しているのは、顧客視点が決定的に欠落してしまっていることだと感じています。
M&Aに関わる誰もが、1+1=2以上のシナジーを発揮したいと考えます。コスト面のシナジーはさておき、収益面のシナジーに目を向けた場合、その効果が発揮されるということはすなわち顧客からのさらなる支持を得られることとイコールだと考えるべきではないでしょうか。しかしながら、どうしてもお互いの内部体制や業務内容にばかり目を向けることになり、顧客からの視点が等閑になってしまうのが現実のようです。
是非ともスタート時に顧客へ目を向けることをお勧めします。これまでの顧客からはさらなる支持を得るために、また新しい顧客を獲得するために、統合した企業が約束できることは何でしょうか?あるいは約束すべきことは何でしょうか?それを統合する両社で考えるプロセスこそがもっとも重要なのではないでしょうか。それが明確になれば、自ずとどんな仕事をしなければならないのか、それはどんな組織体制で、といった答は出るはずであり、結果的にスムーズな“経営統合”につながるのではないかと思います。
当レポートは、株式会社船井総合研究所 戦略コンサルティンググループが発行しております。