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地域を変える反転のシナリオ シリーズ【6】 「GLE(Global Leadership Education)の可能性」

このコラムを目にしたあなたにこんにちは!船井総合研究所パブリックイノベーションチームの伊東威(いとうたけし)です。第6回の今回は、現在全国への普及に向けて取り組んでいる「感動のリーダーシップ教育・GLE(Global Leadership Education)」について記します。どうぞよろしくお願いします。

■グローバルリーダーシップ育成プログラム「GLE(Global Leadership Education)」とは?
「GLE(Global Leadership Education)」は、私の上司でもある学校法人専門のコンサルタント・松下和彦さんと、CSE株式会社・岡ベラさん(http://www.csekk.com/)が中心となって開発・展開している「グローバルリーダーシップ教育プログラム」です。

「芸術・平和・リーダーシップ」という普遍的なテーマを掲げ、小中学生・高校生が中心となって世界的に活躍するアーティストを招聘し、地域公開で開催する大型コンサートの準備のプロセス、そして当日の運営やワークショップの場から学ぶというものです。2014年に長崎で1校からスタートし、昨年は3校が実施しました。取り組み内容に各国大使館(イスラエル、イタリア、オーストリア)が注目し、「自国と日本の文化交流の懸け橋になる」と、自国期待の将来有望な若手アーティストを積極的に推薦するなど、注目度が高まってきているプログラムです。
 

■「とまどい」と「緊張感」が「自主性」と「連帯感」を生み出す
普段なかなか出会うことができないグローバルに活躍する本物のアーティストとの交流は、子どもたちにとっては大変貴重な機会になりますが、一方では「とまどい」と「緊張感」も生じます。通常、学校行事で行なわれる文化祭などの催しは、来場者が生徒の家族や友人といったごく限られた人たちです。また、文化鑑賞会などにおいては、プロのイベント企画会社が準備運営に関わるわけで、生徒たちはあくまで「お客様」です。一般的に、世界的アーティストをコンサート等に招聘する場合には、マネジメント会社・イベント企画会社・音響設備業者などが大々的に関わって・・・というのが普通です。

ところが、このGLEでは、広く地域の方々や行政関係者・マスメディアも来場するだけでなく、その準備と当日の運営は、ほぼ生徒に託されるのです。「こうすれば正解」という答えがない議論、「こうすれば完璧だ」という到達点が最初から存在しない物事を進める中では、必ずとまどいと緊張感が生じるものですが、それをきっかけに手探りで方向性を見つけ出していけば、おのずと自分の頭で考え、想像して行動する「自主性」と、仲間とときにぶつかりながら決定事項の実行には全員で一丸になる「連帯感」が生み出されます。これこそがGLEの醍醐味であり、真骨頂です。

■「グローバル」とは「自らのアイデンティティに気づくこと」
第4回のコラムで、「『学習』とは『自らが自主的・自発的・能動的に獲得するもの』」と述べましたが、このGLEはまさに「最良の学習機会を創出する」プログラムです。今、日本では「グローバル」をキーワードに様々な政策が打ち出されています。その主たる内容は「国際競争力の強化」「海外で通用し活躍する人材育成」といったものです。文部科学省においても2012年度より「グローバル人材育成推進事業」として、国際的なカリキュラムを重視した学部学科を設置する大学に対して助成金を付与する取り組みも始まっています。

しかしながら、「グローバル」つまり「海外の人と交わり海外の物事を知ること」の最大の意味合いは、「自らのアイデンティティに気づくこと」だと私は思います。つまり、自分と「異質な」人や文化に触れることで、単なる「比較対照(優劣をつける)」を超えた気づきが生まれると思うのです。

GLEで行なわれるワークショップでは、「あなたにとってリーダーシップとは何ですか?」「どうしたらあなたのように世界で活躍できますか?」といった質問が、生徒からアーティストへ投げかけられます。アーティストの中には、苦難の歴史を持つ国や宗教的対立が今もなお続いている国の出身者もいます。そうしたアーティストの質問に対する答えから、子どもたちは「自らのアイデンティティ」「今生きている日本のいう国のアイデンティティ」を見つけていくと思います。

このGLEを、「地域社会共育」の一つのモデルとして、今後全国各地に広げていく決意です。ぜひ、あなたにもGLEの今後を見守っていただけたら幸いです。お読みいただきありがとうございました。

【著者プロフィール】
伊東 威(いとう たけし)
株式会社船井総合研究所 パブリックイノベーションチーム

前職で全国4万4000名、宮城県で1000名の中小企業経営者団体にて全国最年少の事務局長に就任。県内各地の中小企業経営者および社員向けのセミナー企画運営を手がけるほか、行政や学校や商工団体と中小企業政策やキャリア教育プランなどの策定・実行に取り組む。その後、株式会社 船井総合研究所の「パブリックイノベーションチーム」への配属を志願して入社。
得意分野は、産学官の強みや特色を活かした中小企業・小規模企業振興政策の策定・実行支援。「義理と人情と浪花節を科学する」が信条。